研究課題/領域番号 |
17K02836
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 勢紀子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20205925)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本語学習者 / 文語文 / 古典学習 / e-learning / 教材開発 / 教授法 |
研究実績の概要 |
1. 前年度に続き、科研メンバーによる試作版教材使用者へのインタビュー調査を実施した。また、前年度にクロアチアで教材について発表したことを機縁として、海外大学に所属する使用者からのレポートを入手することができた。インタビュー調査への回答とレポートの記述内容を合わせて分析し、試作版教材の評価できる点と問題点を明らかにした。 2. 調査結果から明らかになった問題点を解消するために、教材のプラットフォームを新たに作り直し、教材を再構築することとし、日本語Web教材に詳しいWebデザイナーの協力を得て、そのための作業を行った。現時点で未公開であるが、"BUNGO-bun GO!"というタイトルのサイトを立ち上げ、改訂版教材を作成した。昨年度までに作成した17のテキストのうち、『土佐日記』、『枕草子』、『宇治拾遺物語』、『蘭学事始』、『故郷』の5作品による6つのテキストを、[本文]―[本文の説明]―[現代語訳]のシンプルな構成で掲載した。また、語彙リスト、用言一覧、助動詞一覧、助詞一覧等の参考資料も新しいテキストの形式に応じて作り直し、サイトに載せた。 3. 留学生を対象とする古文入門、古典入門等の授業を行い、e-learning教材を利用したシラバスと教授法について検討した。 4. 開発教材の試用結果と教材の再構築についての研究成果を、大学紀要や国内の関連研究会で発表し、改訂版教材のデモンストレーションを行った。また、古文入門の授業についての報告を大学紀要に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年から2019年にかけて、本研究で作成した文語文e-learning教材試作版の使用者へのインタビュー等による調査を実施した。その結果、既存のプラットフォームを利用していた試作版には、動作が非常に遅い、構成が複雑でわかりにくくナビも見にくい、近年急速に普及し学習者の間で広く用いられているスマートフォンでの利用に適さないなど、主にシステム上の様々な問題があることが判明した。そのため、よりよい教材の作成を目指し、2019年5月の時点で、教材を根本的に作り直すことにした。新たなプラットフォームの構築、教材の構成の根本的な見直し、それに合わせたコンテンツのデータ書き換えに多くの時間と労力を要したため、当初2019年度に実施予定であった内容の事業を行い、研究課題を達成することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように研究の進捗状況に遅れが生じていることから、本研究の研究期間は本来2019年度までの3年間であったが、研究期間の延長申請を行い、2020年度中に研究課題を達成することを目指している。 現在、未公開であるが、新規に立ち上げた改訂版文語文教材"BUNGO-bun GO!"のサイトに、6つのテキストと参考資料(語彙リスト、用言、助動詞、助詞の一覧など)を掲載している。動作の速度、教材の構成のわかりやすさ、スマートフォンでの利用の便については、大幅に改善された。テキストに含まれる語彙と語彙リストはリンクされ、相互に行き来しての参照が可能になっている。 改訂版教材を研究代表者および研究協力者が担当する古文入門、古典入門、近代文語文を取り上げた国際共修学ゼミ等の授業で試用し、その利用法を検討して、日本語学習者に対する効果的な文語文教授法を開発する。 本年9月までに、現在教材に入っているテキストを含め、『伊勢物語』、『土佐日記』、『枕草子』、『宇治拾遺物語』、『平家物語』、『徒然草』、『一寸法師』、『蘭学事始』、『故郷』の9作品による16のテキストを掲載する。それと並行して語彙リストその他の参考資料を補充し、その上でサイトを一般公開する。 使用者からのフィードバックをふまえて、本年度内にさらに教材を改善、拡充し、関連学会等で発表するほか、セミナー等を開催して本研究の研究成果を一般市民にも広く知らせる機会を設ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年5月にプラットフォームの変更を含む教材の根本的な見直しを決め、改訂版の作成に着手した。2019年度末までに、改訂版サイトの基本的な枠組みの構築と、予定していたテキストのうち6編のテキストの掲載を完了したが、残りのテキストのデータを改訂版の形式で作り直す時間がなかった。また、参考資料含め教材全体の最終的な整備や、研究成果の発表も必要である。その部分の作業は、研究期間延長が承認されたことにより、2020年度に行うことになった。そのために、次年度使用額が生じたものである。
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