研究課題/領域番号 |
17K02839
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
八若 壽美子 茨城大学, 全学教育機構, 教授 (20334013)
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研究分担者 |
池田 庸子 茨城大学, 全学教育機構, 教授 (30288865)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 元留学生 / 留学評価 / ライフストーリー / 日本語学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本留学後3~10年を経た元留学生のライフストーリーから、個々の元留学生が留学経験をどのように捉え、留学がその後の人生にどのような影響を与えたかを明らかにすることである。また、留学時の日本語の習熟度や学習状況、使用状況及び留学後の日本語保持等が留学評価や人生に与える影響の解明を試みる。 研究代表者・分担者共同で行った、博士号取得が目的のインドネシア人理系大学教員4名対象の研究では、研究での満足度は全員高いが、指導教員の意向や同国人コミュニティの有無、現地コミュニティへの参入の必要性等による日本語習得の差が研究外での満足度に影響を与えていることを明らかにした。 研究生、修士・博士課程の計5年半の日本留学経験を持つインドネシアの大学教員3名を対象とした研究では、論文執筆は英語で、修士課程の授業は日本語が多い点は共通していたが、日本語習得や使用には差が見られ、その要因として本人の性格や意識、指導教員の意向、研究分野、同国人コミュニティとの関係の影響が観察された。 タイの日系企業で働く元交換留学生を対象にした研究では、留学期間が1学期間の3名と2学期間の5名の留学評価を比較した。日本語の上達の実感、暗黙の社会規範の受容、日本への持続的な関心と愛着、自信の獲得等の共通の成果が認められたが、人的交流では2学期間留学者に自発的なコミュニティ参加によるネットワークの拡大及び帰国後も続く関係の深化が見られ、人的交流での差に期間が関与していることが判明した。 タイの日系企業で翻訳・通訳業務に携わる元交換留学4名を対象した研究では、留学中の他者との関わりやその評価によって自らの日本語の上達を確認し、日本語の上達が他者との関わりを促進するという経験を繰り返して人的交流が拡大・深化していく循環的過程が観察され、同様の過程は現在従事している業務でも見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者(①、②研究協力者との共著、③分担者、協力者との共同発表)は以下の論文、ポスター発表により、研究の成果を発表した。①「タイの日系企業で働く元交換留学生の留学評価―翻訳・通訳業務の場合―」『茨城大学全学教育機構グローバル教育研究』第4号、119-136、②「元留学生の日本留学評価 ―インドネシアの大学教員の場合―」『茨城大学全学教育機構グローバル教育研究』第4号、137-153、③「インドネシアの理系大学教員のライフストーリーに見る留学評価」JALT Study Abroad SIG Online Conference 2020 ポスター発表(2020.9.26)、④「タイの日系企業で働く元交換留学生の留学評価―留学期間による比較―」2020年度日本語教育学会秋季大会 ポスター発表(オンライン 2020.11.29)
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度に発表できなかった「ベトナム人日本語教師の留学評価」、「東南アジアで翻訳・通訳業務に従事する元留学生の留学評価」に関する研究成果を発表する予定である。 さらに、個々のライフストーリー36編に加えて、留学評価と日本語保持及び留学修了後の日本との関係等の関連について、非正規生(日本在住・海外在住(国別))、正規生(日本在住・海外在住(修士・博士修了者、博士修了者))の各群に分けて日本語学習と留学評価との関連を概念図化し、全体の研究成果として研究報告書を作成し、Webで公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はCOVID-19感染拡大の影響により発表準備の段階で海外研究協力者との対面での共同作業ができず分析に遅れが出たこと、発表予定だった海外でのセミナー、国際学会の中止・延期により発表の機会を失ったこと等で全体的な遅れが出た。その結果、当初予定だった研究報告書の作成はできず、補助事業期間を延長することとなった。 未発表の成果発表のための旅費、成果報告書(web版)作成の経費が必要となるため、当該経費を使用する。
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