研究課題/領域番号 |
17K02844
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅原 雅枝 東京学芸大学, 国際教育センター, 准教授 (80594077)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 協働による教員の学び |
研究実績の概要 |
近年の学校教育現場では、一般の教員が行う教科指導の中で、外国人児童生徒等の日本語力に配慮することが期待されている。本調査は、そのために必要な研修の在り方を検討するものである。 平成29年度は、大きく2つの調査を行った。 ① 日本語担当教員と学級担任間の協働による授業実践の取り組み:実践協力校でアンケートを行ったところ、教員の多くが児童の日本語力の差への対応が課題で授業改善をしたいと考えており、ティームティーチングに抵抗はないと述べた。そこで、イギリスのパートナーシップティーチングの考えに基づき、日本語担当教員と学級担任が共に授業を計画・実践し、「外国人児童の困り感を意識した授業づくり」をテーマに校内授業研究会を開催して実践と実践を通した学びについて全教員が共有する場を設定した。その後のインタビューから、授業を直接担当した教員は日本語担当教員から多くを学んだが、その他の教員には担当者らの意図が十分に伝わっていないことがわかった。教員の学びは協働での授業づくりのプロセスで得られるもので、結果としての授業を単に観察するだけでは他の教員が学ぶことは困難であると推測された。 ② オーストラリアにおける教員研修:オーストラリアでは初期の英語指導(期間は1年~1年半程度)は専門性の高い「EAL(英語を母語としない子どもに対する英語教育)教員」が指導するが、その後は一般の教員による指導となる。一般の教員への「EAL生徒に対する教科指導」等の教員研修機会は用意されているものの、受講は教員自身の意識・関心と管理職の学校経営方針によるという。①で実施したような取り組みは今回の調査ではみられなかったが、EAL担当教員、EALを専門とする大学教員は「実施できれば有効だと思う」と答えた。 今後、「協働による知識スキルの伝達」が有効となる要件と実施上の課題を検討していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力校の体制が申請段階とは変化したため、対応が必要となり、実質的な調査活動の開始が予定より遅れた。また、新体制の中で協力教員が多忙となり、打ち合わせ時間が十分に確保できなかった。 海外調査については、イギリスを予定していたが先方の日程と調整がつかず、英語を母語としない子どもたちへの教育を長く行っているオーストラリアでの教員研修の調査となった。 したがって、全体としてはやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力校とは新体制の中でも良好な協力関係を築くことができたため、次年度も引き続き日本語担当教員と学級担任の協働による授業実践とその検証を継続する。次年度は、学年・教科の多様性を意識した実践計画を立て、この研修方法の有効性を探る。また、校内の直接実践にかかわらない教員への情報伝達方法を検討する。 海外調査では、29年度にかなわなかったイギリス調査を実施する予定である。海外調査の目的は2点である。1点目はイギリスにおける「協働による授業実践を通した研修(イギリスでは「パートナーシップティーチング」)」の現状である。自治体を核としてこの研修に取り組んでいるマンチェスターを中心に調整を行っている。2点目は、一般教員を対象とした非母語話者への指導についての研修の実施状況である。オーストラリア調査でも日本と共通の課題が聞かれたため、「協働による授業実践を通した研修」に限定することなく教員研修の方法、実施団体、効果等について情報を収集し、「パートナーシップティーチング」との比較を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:海外調査がイギリスからオーストラリアへ変更となったうえ、調査期間が短くなったこと、協力校訪問回数が予定より少なかったこと、データ入力等を依頼せずに自身で行ったことによる。
使用計画:協力校を訪問するだけでなく、協力教員に出張を依頼し打ち合わせ時間を確保する。その際の旅費として使用する。また、関連する学会・研究会において情報を収集するための参加費・旅費として使用する。
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