本調査は日本語指導が必要な児童生徒に配慮しつつ教科指導を行うことのできる教員を育てる研修の在り方を検討するものである。本年度は、最終年度であり、以下の2点について補助的調査を継続するとともにこれまでの調査研究のまとめとその報告を行った。 ①日本語指導担当教員と学級担任の協働による授業実践を通した研修の取り組み:昨年度に引き続き、日本語指導教室と専任教員を有する公立小学校において、「パートナーシップティーチング」と呼ばれる学級担任に日本語指導担当教員の知識経験を伝達するための取り組みを行った。またこれまでの複数回の取り組みを振り返り、当該校で実施した教員研修の成果と課題について担当教員と考察した。その結果「パートナーシップティーチング」によって日本語担当教員の実践知が伝達されたケースでは、「日本語担当教員と在籍学級担当者の心的距離の近さ」「在籍学級担当者の思考の柔軟性」「在籍学級担当者の教科指導者としての力量の高さ」が共通していた。これらに基づき教師教育学会においてポスター発表を行った。 ②イギリスの英語を母語としない(EAL)生徒への指導を担当する教員研修の変容:イギリスではEAL生徒も通常学級内で指導することを基本としていたため、①で取り上げた「パートナーシップティーチング」と呼ばれる研修が開発された経緯を持つ。しかしながら、近年のEAL教育現場の大きな課題とされる、EAL専門家の不在により「パートナーシップティーチング」が学校や地域における教員間の連携研修から、外部組織による研修の手法へとその実施状況が変化を見せているという。現職の教員、教師教育者へのインタビューでは、こうした状況は近年の公教育をめぐる施策と密接に結びついており、EAL教育の今後に対する不安も語られた。これらの調査結果を、日英教育学会において報告した。
|