本研究では,カタカナ語の語彙知識の「使用」に焦点をあて,カタカナ語とその類義の和語・漢語との使い分けに関する調査を行う。カタカナ語がどのような文脈で使われるのか,また,どのような語と共起するのかを明らかにし,その結果をカタカナ語の意図的語彙学習のための教材開発にいかすことをめざす。 最終年度である令和元年度(2019年度)は,これまで行ってきた日本語学習者を対象とした使い分けに関する調査(調査1)を進めると同時に,収集したデータをさらに分析した。その結果,学習者も自分なりのルールに基づきカタカナ語と類義語の使い分けをしようとしているが,日本語母語話者の傾向とは違いやずれがみられ,使い分けが難しいことが明らかになった。例えば,「カバーする・補う」のペアで,母語話者の産出文では幅広い意味を持つ「カバー」が多くの語と共起し,さまざまな意味で使われている。しかし,学習者の産出文では,「補う」「覆う」の意味に限定され共起する語も限られており,母語話者の結果とは違いがみられた。また,カタカナ語と類義語との使い分けに関する新たな調査(調査2)に着手した。調査1で用いた文産出や類義語との違いを自由記述する調査方法では調査対象者の負担が大きいため,調査2では選択式の質問紙調査とする。質問項目は,これまでの調査結果をもとに作った例文の文脈で,カタカナ語とその類義語のどちらがふさわしいと思うかを選択する問いである。さらに,日本で生活する外国人のためのカタカナ語学習を考える基礎資料として,生活に必要な基本カタカナ語についても調査した。以上の研究成果の一部は,学会で口頭発表を行い論文としてまとめた。 今後,これまでの調査結果をもとに調査語彙を精選し,さまざまな文脈でのカタカナ語とその類義語との使い分けに関する質問紙調査を行い,効果的なカタカナ語の教材開発をめざす。
|