研究課題
本研究は日本語を第2言語として日本社会を生きる人々の日本語学習と学習者オートノミーを社会的文脈から捉えようとするものである。また、協力者のライフストーリーが持つ日本語学習教材としての可能性を検討することも目指した。最終年度もインタビューを行うことで、当初の計画どおり、12名の研究協力者の日本語学習や日本での経験についてのライフストーリーの作成と分析を終えた。全てのライフストーリーを分析した結果、社会参加を可能にする日本語学習は、社会的アイデンティティをもたらすことばの習得であり、非線形的な複雑性を示す社会的文脈に潜む要因によって創発されることが示された。特にソーシャルネットワーキングといったオンライン上のコミュニティにおいては、そこで繰り広げられる日本語による実践が学習リソースとなるだけではなく、オンラインとオフライン、JFLとJSLの環境の違いを超えた日本語学習と日本語話者としての自己実現を可能にすることも明らかになった。また、学習の原動力となる学習者オートノミーは、社会的文脈との相互作用で生成されるもので、要因が持つアフォーダンスを活用しコミュニティにおけることばを獲得しようとする主体性であると捉えることができた。さらに、質的研究法がもたらす自己の再解釈が、両親がろう者である報告者が持つバイカルチュラルな経験とその視点から社会参加について検討する必要性が出てきたため、最終年度も分析を継続し、報告者と姉弟がろう者である研究協力者がそれぞれの経験についてオートエスノグラフィーによる分析を行った。それにより、日本社会に根付く音声日本語ネイティブスピーカリズムが音声日本語母語話者以外の社会参加を阻んでいることが示唆された。最終年度はライフストーリーを掲載するホームページの作成とバイカルチュラルな視点からの分析を継続したため、学習教材としての可能性については今後の課題となった。
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同志社大学日本語・日本文化研究
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Whose Autonomy? Voice and Agency in Language Learning: Selected Papers from the 2018 Independent Learning Association Conference
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言語文化教育研究
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https://doi.org/10.14960/gbkkg.17.277
https://livinginjapan.me/