研究課題/領域番号 |
17K02876
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
野々口 ちとせ 城西国際大学, 国際人文学部, 准教授 (30361819)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内容重視の言語教育 / 母語使用 / 思考と言語 |
研究実績の概要 |
29年度は、以下4つの研究活動を行った。 (1) 留学生へのインタビュー調査:英語による学位取得を目指す留学生を対象にインタビュー調査を実施し、彼らの言語総体(母語・第二言語・外国語を合わせた言語の総体)に対する当事者評価を探る調査方法を検討した。 (2) テキスト分析法研究集会の実施:テキストマイニングを用いた研究を行っている研究者を招聘して研究集会を実施し、インタビュー調査や教育実践研究におけるテキストマイニングの活用法を検討した。 (3) 内容と言語の統合型学習に関する先行研究の調査:本研究で複言語使用による内容と日本語の統合型学習プログラムを設計するにあたり、日本国内の年少者日本語教育の方法論を参照した。学校教育における外国人生徒への教科指導と日本語指導の統合に関する先行研究を概観し、これを研究ノートとしてまとめ『城西国際大学大学院紀要』第21号に発表した。現在、外国人生徒に対する教科指導と日本語指導の統合には、教科指導に子どもの母語と日本語の両方を使用することで思考と言語の相互交渉の活性化を追求する「教科・母語・日本語」の相互育成アプローチが存在する。大学・大学院の留学生を対象とした専門科目と日本語の統合型学習も、「思考と言語の相互交渉の活性化」の媒介に、留学生の持つ複数の言語(母語・英語などの媒介語)を使うことが有効であると考えられる。 (4) 複言語使用による内容と日本語の統合型学習の実践とデータ収集:国際関係を専門とする大学院の日英二言語プログラムにおいて、専門科目である日本の戦後史を内容とした日本語クラスをデザインし、実施した。学習活動分析のためのデータとして、教室談話の音声、教材、学習者の成果物などを収集し、学生の教室談話のうち、中国語・英語使用部分の一部を文字化して日本語に翻訳する作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) 日本国内の大学で、英語による学位取得を目指す留学生を対象としたインタビュー調査の実施、(2) 複言語使用による内容と日本語の統合型学習のデザインと実施、の2点は当初の計画通り達成した。しかし、(1)は調査方法に改善を要し、(2)は教室談話の文字化作業が遅れて、一次分析がまだ終了していない。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 29年度のインタビュー調査結果を踏まえて、調査方法を改善する。そして、日本国内の大学で、英語による学位取得を目指す留学生に加え、日本語による学位取得を目指す留学生も対象に、インタビュー調査を実施し、彼らの持つ複数の言語全体に対する当事者評価を明らかにする。両者の結果や29年度の調査結果との比較検討から、共通点・相違点を抽出する。 (2) 29年度に実施した「複言語使用による内容と日本語の統合型学習」の教室談話分析を進め、複言語使用による思考の展開や深化が見える部分を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
教室談話の文字化作業に遅れが生じたため。この遅れを取り戻すべく、30年度に引き続き教室談話の文字化作業を進めるために経費を使用する予定である。
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