1990年代以来,ヨーロッパにおいてその効果が実証されている「内容言語統合型学習(Content and Language Integrated Learning: CLIL)」は,複言語主義(plurilingualism)の理想を具現化する枠組みとして世界の教育関係者に注目されている。日本では,2010年代半ば頃から,CLILのアイデアを取り入れた教室活動についての議論が盛んに行われるようになったが,その効果についての実証研究は,質・量ともにまだ不十分な状態である。 本研究は,教師が「内容 (Content) 」と「言語 (Language)」を統合することで,どのように学習者の「認知 (Cognition)」を活性化しているか,それがどのように外国語能力の発達につながっているかを検証することを目的に実施された。学習者が目標言語で執筆したアカデミックエッセイをデータとして収集し,どのような言語的特徴が見られるかを,(i) 書き手のVoice(EngagementやAttitude) と (ii)結束性に着目して分析した。また,CLILを担当する教師へのインタビューを実施し,内容 (Content) と言語 (Language) の統合をどのように行っているか,認知 (Cognition) を育てるためにどのような工夫をしているか,アカデミックリテラシーと関係についてどのような意識を持っているかについて調査した。
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