研究課題/領域番号 |
17K02896
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研究機関 | 西武文理大学 |
研究代表者 |
鈴木 政浩 西武文理大学, サービス経営学部, 准教授 (10316789)
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研究分担者 |
川井 一枝 宮城大学, 基盤教育群, 准教授 (40639043) [辞退]
望月 好恵 国際武道大学, 体育学部, 准教授 (80448919) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シラバスとポートフォリオの統合 / 4技能の統合と連動性 / 質的研究と量的研究の循環 / 授業の枠組 |
研究実績の概要 |
望ましい英語授業の2つの要因のうち,第1の要因(授業者主導の授業)に関して授業実践の検証を済ませた。第1の要因に含まれる項目のうち,学習者に対する自律支援と中長期的な見通しを組み合わせる授業の在り方に関して,学習方略を組み込んだシラバスとポートフォリオの統合(シラバスに具体的な学習方略を配置し,習得した順に学習者がチェックし進展を確認する方法)の効果を検証した。 実践の成果は数値化したデータに加え,学習者の自由記述から次の量的研究の糸口をつかむといった,量的研究と質的研究を循環させて授業実践を発展させる手法を継続して採用している。 見通し・自律支援・学習方略を組み合わせた授業の在り方の効果が検証できたことから,第2の要因のうち授業者の学術的専門性を活かした授業を経由し,英語運用能力を高める授業への発展過程が明確となった。英語運用能力を高めるためには4技能を統合した活動や学習が有効であることは指摘されているが,本研究ではこれを一歩進め「連動性」という概念を採用するに至った。各技能には下位技能が存在し,下位技能相互の補い合いや相乗効果により学習がより促進されるという考え方である。この考え方を適用した授業の在り方については,2つの領域<(1)ListeningとReadingの連動性を活かした授業 (2)WritingとSpeakingの連動性を活かした授業>で授業実践の効果を検証した。現在3つ以上の技能を連動させた授業実践事例の考案を進めるとともに,英語運用能力を高める領域における枠組構築のために理論的な整理を進めている。 授業学研究の核心は授業の発展過程を枠組として示すことである。申請時の枠組に加えて学習動機づけ研究で主張される,理想L2(第2言語)自己の考え方を中心にした枠組についても提案することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度はシラバスとポートフォリオの統合とその成果に関してのみ効果を検証する予定であったが,研究分担者や連携研究者の努力により,新たな枠組の提案をすることができた。 加えて授業者主導の授業から学習者主体のCommunication活動では,教室内でのペアワークやグループワークが中心であり,まとまった量の英語に触れることを想定していなかった。しかし,下位技能間の連動性という考え方を想定することにより,4技能習得を促進するための学習方略に関しても提案ができるようになった。このことから,生の英語やまとまった量の英語に触れることを通じた英語のやりとりを想定することが可能となり,本研究で提案している枠組を,より精緻かつ具体的に発展させることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
授業の枠組が具体的に精緻化できたことから,一部研究計画を変更する。これまでの学習内容(勉強の仕方,参加表現,言語活動)の定着を重視する研究に加え,英語運用能力を高める指導のプロセスに重点を置き,研究と実践の効果について検証を進める。 英語運用能力を高める授業が,得点力の高い学習者だけを対象とするのではなく,より広範な学習者を対象に展開できるよう次の点に新たに着目する。特に第2の要因における「考える授業」「授業者の専門性を活かした授業」に今まで以上に焦点を当てる。 (1)学習者の到達度に応じて適切な難易度の英語教材を提供するための研究 (2)4技能の連動性を活かした授業実践事例の構築と,理論的裏付け,および実践の効果検証 (3)語彙力向上のための指導法と教材の確定(すでに知っている語彙を活用した語彙増殖法,派生語・語源等に着目した語彙増殖法,e-learningを活用した語彙の定着法 (4)学習者の記憶容量に応じた発話の指導(長さや語彙難易度の調整)。 シラバス・学習方略・ポートフォリオの統合という視点から,CEFRのCan-do Listの項目を具体化した上で,相互の関係や順次性に配慮した新たな枠組構築も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者・分担者ともに個人研究費・学内共同研究費等の収入がありこれを充当したこと,学会の大会が近隣で開催されたこと等により,当初の支出計画ほど出金がなかったため。
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備考 |
(1)(2)は更新を停止。(3)に研究成果を引き継いでいます。
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