研究課題/領域番号 |
17K02903
|
研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
重光 由加 東京工芸大学, 工学部, 教授 (80178780)
|
研究分担者 |
大塚 容子 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 教授 (10257545)
岩田 祐子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50147154)
大谷 麻美 京都女子大学, 文学部, 准教授 (60435930)
村田 泰美 名城大学, 外国語学部, 教授 (70206340)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | リンガ・フランカの英語 / 異文化接触会話 / 異文化理解 / 南アジア / 東南アジア / スピーキング能力養成 / 英語教育 / 文化社会的背景 |
研究実績の概要 |
本研究は、文化・社会規範の影響を最も受ける談話スタイル(話題を展開、説得、意見対立の対処、情報開示、待遇の方法)について、ELFの観点からアジア英語変種を対象に調査し、ELFとしての会話ストラテジーを抽出し、グローバル社会でELF英語を話す際に必要な異文化間相互調整能力の養成を目的としている。平成29年度収集したデータを、平成30年度は、予定通り、実験会話データ(英語または日本語による13の異文化接触会話データ(各30分))のトランスクリプトの文字起こしを行い、分析可能になるように処理を行った。トランスクリプトされたデータを整理した後、データのパイロット・スタディ分析を中間発表として発表した。また、座談会で、インド人が日本人に対して、また、日本人がインド人に対して、コミュニケーションでどのような困難を感じているかについて分析し、論文としてまとめた[1]。また、会話データに関しては、相手の発話が聞き取れない、または、理解できないときに聞き手がどのようにふるまうかについてパイロット分析を行った[2][3][4]。([1] 重光由加「インドの言語環境とELF使用場面から見る英語コミュニケーション能力―インド人と日本人のビジネス・パーソンへの座談会から―」東京工芸大学紀要 第41巻2号 pp. 26-35。[2] 重光由加「聞き手による会話の修復とラポール:―談話分析的アプローチによるELF接触場面のケース・スタディ―」言語処理学会第25回年次大会発表論文集 pp.838-841 [3] 重光由加「 聞き手による会話の修復とラポール:―談話分析的アプローチによるELF 接触場面のケース・スタディ― 」口頭発表 言語処理学会 名古屋大学 [4] 重光由加「談話分析に基づく交流会話の中の聞き手の修復:インド人と日本人のELF使用場面」東京工芸大学紀要 第41巻2号(印刷中))
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者と分担者の連絡やミーティングはスムーズに行われているが、データ録画の会話参加者の英語の発音が、それぞれの母語の影響を受け独特な発音をしていることにより聞き取りが困難なため、データの分析に想定した以上の時間がかかっている。母語話者の文化・社会的背景も含めた考察も必要なため、分析の進捗に多少の影響がある。東南アジアのデータが少ないため、一般化するための再調査も検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、以下の4つの点に留意してすすめる。まず、データ分析の緻密化。標準英語母語話者で日本語母語話者が母語スタイルの異なりに起因して英語がうまく話せなかった項目と、平成29年度にアジアで収録した会話データを比較し、国際共通語としてのELFで異文化間相互調整に必要な談話ストラテジーを抽出する。次に、アジア人英語話者の英語会話分析の結果と合わせ、日本語母語話者にどの順番でどのようなストラテジーを教えていくべきか、指導法を検討する。さらに、結果の一般化の検討。研究結果がどこまで一般化できるかを検討する。一般化が困難な場合は、データの追加収集も視野にいれる。また、論文執筆を行う。アジア人話者の英語談話スタイルに関する論文、アジア人英語と標準英語母語話者の談話スタイルの比較する論文、アジアを拠点とする日本人ビジネスパーソンの英語コミュニケーションの実態、アジアのELFによる異文化間相互調整の分析について、研究代表者と研究分担者が、共同、または個別に論文を執筆し、学会誌に投稿する。最後に、指導用アクティビティと指導法考案を視野にすすめる。日本語母語話者のELF使用時に困難と観察された点を強化するための、指導法考案と指導用アクティビティの検討を行う。談話スタイルの習得や異文化相互調整の習得は、本で知識を蓄えるだけでは実行できない。アクティビティ・ブック(活動型タスク集)が必要である。海外ではいろいろなテキストが出版されているが、日本語で書かれた日本人向けのものはほとんどない。指導書だけではなく、海外との折衝をするビジネスパーソンに直接働きかけられるも、研究結果に基づいた情報発信(書籍執筆を含む)をする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、海外の調査がなかったこと、また、隔年で行われる国際学会がない年度であったため、旅費が抑えられた。通常の定期的な研究ミーティングは名城大学を主に使用したが、名城大学は日曜日以外は教室使用料がかからなかったため、開催日を調節するなどして、出費を節約することができた。さらに、遠方の学会が少なかったため宿泊を伴う出張旅費もほとんどかからなかった。
|