研究課題/領域番号 |
17K02914
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中西 のりこ 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (80512285)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 音素カウンターの充実 / 指導実践 / 効果の検証 |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は「音素カウンター」の機能を充実させること及び理論的な発音指導の有無が「発音・流暢さ」に影響を及ぼすかを探るための予備調査に重点を置いた。以下「研究実施計画」に示した3つの項目について、研究実績の概要を示す。
【音素カウンターの充実】音素カウンターver.02及び03のバージョンアップにより、(1)音素比率の出力画面上に示される発音記号をクリックすると本文中のどの部分にその音素が含まれていたかを表示する機能、及び、該当の発音記号が示す音素の発音の仕方を示したサイトへジャンプする仕組み、(2)入力された英文の内容語の第一強勢部分のみに強勢記号を付す機能、(3)入力された英文のとなりあった単語の語末と語頭の発音記号を自動的に確認し、連結・脱落・同化の可能性がある部分を記号で表示する機能 を、それぞれ構築、一般公開した。 【指導実践】(1)任意の英文テキスト中出現頻度が高い音素に注目し、英語の基本的な音韻体系について指導を行った。(2)報告者が担当する英語授業において、受講生が発音記号を見れば任意の英文テキストを発音できるよう指導し、発音記号テストを実施したところ平均点95点という高得点が得られた。 【効果の検証】英語の音韻体系について理論的な指導を行わなかった大学2年次生以上と指導を行った1年次生の間で「発音・流暢さ」得点に有意な差があるかを統計的に分析するため、Versant Speaking test を夏と冬に実施した。また、このSpeaking testの信頼性を探るため、Versant Speaking testを開発しているPearson社による別の新テストを実施している他大学の動向を探り、共同研究の結果をチェンマイで開催された 38th Thailand TESOLにおいて研究発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【音素カウンターの充実】当初計画していた上記(1)-(3)に加え、音素カウンターを2画面構成とし、一方の画面には意図した英文テキストを入力、他方の画面では音声認識アプリによって認識された英文を出力させることにより、それぞれの英文テキストに含まれる音素数を比較するシステムを構築した。今後さらに、音声認識アプリの精度によって認識結果にバラつきが生じることを解決する方策を練る予定である。 【指導実践】当初は報告者が担当する授業の受講生のみを対象に実践を行う予定であったが、「映像メディア英語教育学会(ATEM)」や、申請者が勤務する大学を卒業し薬剤師として活躍する社会人が主催する講演会で招待講演を行うことにより、ESP (English for Specific Purposes)版の音素カウンターを構築するという着想に至った。平成29年度の研究が当初の計画以上に進展している分、予算が許す限りESP版のためのデータベース構築にも着手する予定である。 【効果の検証】当初の計画では効果の検証のための協力者を1-4年次生延べ120名と見込んでいたが、予想を超える228名からの協力を得ることができた。その結果、報告者が勤務する大学では3年次の前期に全員が海外の教育機関へセメスター留学をすることが義務づけられているため、3年次以降の学生の「発音・流暢さ」の伸びは「音素カウンター」を用いた授業実践による効果と関連付け難いことが明らかとなった。今後は1,2年次生から幅広く協力者を募り、2年間のスコアの変動を追うことにより効果の検証を続けることとした。 【研究成果の報告】研究成果について随時学会発表を行った。また、執筆した学術論文3本については、現在査読結果待ちである。
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今後の研究の推進方策 |
以下に、平成30年度の研究実施計画を3つに分けて示す。 【音素カウンターの充実】(1)英音/米音の発音記号を区別し、語彙データベースを2種類に拡張することにより、利用者がイギリス英語版もしくはアメリカ英語版の音素カウンターを選択できるようにする。さらに、イギリス英語とアメリカ英語の違いを示したサイトへジャンプできるようにする。(2)英文中から語彙データベースに含まれていない語を検出し蓄積する機能を活かし、適宜データベースの語彙数を増やす。この際に、上述の「ESP版音素カウンター」の構築の可能性を同時に探る。さらに、利用者への聞き取り調査を実施し、システムの改善を図る。 【指導実践】(1)英語学習者が「音素カウンター」に入力した英文テキスト中、出現頻度が高い音素に注目し、平成29年度バージョンアップにより可能となった音素の発音の仕方を示した動画を確認することで、英語発音のさらなる自主学習を促す。 【効果の検証・研究成果の報告】音素カウンターを用いた授業実践や、その効果を検証する研究結果について、引き続き、口頭発表・論文執筆を行い、研究成果を随時報告する。 【研究を遂行する上での課題】報告者はアメリカ英語発音に慣れ親しんでいるため【音素カウンターの充実】の項で述べた(1)英音の発音表記の実態を新たに探る必要がある。そこで、平成30年度夏にUniversity College London (UCL)で開催される音声学に関するセミナーに参加し、イギリス英語発音についての知識を深める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【当該助成金が生じた状況】「その他」予算に計上していたVersant Speaking test受験料を、Pearson社が開発した新テストと抱き合わせで支払ったため、割引が適用された。「音素カウンター」のバージョンアップに要する費用が当初予算よりも割安であった。 【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】平成30年度夏にロンドンで開催される英語音声学セミナーを受講する。
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