最終年度では,中級教科書における頻度表の有効性を検証した結果をまとめるとともに,これまでの研究成果を総合して,語彙リストを完成させた。 初級段階の学習に使用するのに頻度表は有効でないことについては,これまでに複数の指摘がある。中級段階の場合については具体的な指摘が乏しく,とくに本研究の目的がCEFR B1レベル対応語彙の選出であることから,実際に同レベルの教科書で頻度表のカバー率を算出するという形で検証を行った。頻度表Jones/Tschirner(2006)の改訂版Tschirner/Moehring(2020)について,ドイツ語教科書6点でのカバー率を算出し,独和辞典の重要語リスト2点と比較した。その成果を「中級ドイツ語教科書における頻度表の有効性」(『富山大学人文科学研究』第81号,2024年8月刊行予定)としてまとめた。 最終的に選出する語彙について,上記の結果も考慮に入れ,頻度表,既存の語彙リスト,これまでに作成した辞書の重要語リストおよび教科書語彙リストを比較しながら,再度不要と思われる語,追加する必要のある語を点検した。他リストで未掲載の比較的新しい語は,Webサイトで最近の使用状況を考慮した。とくに日本人学習者がドイツ語で発信するという点をとくに考慮して,低頻度であっても,日本的な事物・事象を表す語,日本近隣の地名,国名,国民名,言語名等はリストに入れた。また学習者が学習上利用する教材,学校関係の語も追加した。 作成した語彙リストを「CEFR B1対応ドイツ語語彙リスト」として公開した。
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