研究課題/領域番号 |
17K02929
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中住 幸治 香川大学, 大学教育基盤センター, 講師 (20758875)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コミュニケーション英語 / 英語表現 / 語彙コーパス / 文法事項 / 教科書採択 / use / 言語活動 |
研究実績の概要 |
2017年度は主に高等学校英語検定教科書の初版、改訂版内の使用英文を収集し分析した結果を発表した。まず質の判断の一要素である例文中使用の語彙レベルを見るためのコーパスとして公開されている"JACET 8000"と"CEFR-J"を用いて初版と改訂版「コミュニケーション英語I」を比較した結果、初・改訂版とも中レベル教科書の語彙レベルが高めであることや、固有名詞の使用頻度が高まっている等の傾向が見られた。それと同時に前述2つの語彙コーパスを基に語彙レベルを測定した結果が異なる場合が生じた。このことより、語彙レベルを検討する際に複数のコーパスを使用する必要があることを再確認した。次に「英語表現Ⅰ」について採択状況や例文の質の観点で例文比較を行った。まず採択状況については市販英文法教材に似たレイアウトの「文法独立」型教科書採択が教科書数、採択数とも大きく伸びたことが分かった。原因としては、文法事項の網羅性が高いことが一因として考えられる。さらに難レベルの「文法活動融合」型教科書よりも中レベル「文法独立」型の教科書の方が文法事項をより詳細に網羅していることも一因として考えられる。その一方各課トピックと例文内容の関連性については「文法活動」型に比べて「文法独立」型は関連性がほとんど見られなかった。"use"を考慮した例文は以前よりは見られるようになっているもののまだまだ十分ではないことが大きな課題として浮き上がった。次に、言語活動の中で示されている英文例を検討すると文脈を考慮した身近な英文が多く見られるため、言語活動の中で示されている英文や活動トピックを収集し、文法事項別に整理分析した。その結果、例えば分詞構文では「同時性」、受動態では「焦点の変化」といった文法事項が持つ語用論的要素を含む英文が見られることが分かった。従って言語活動と英文法指導の連動性も鍵であることが改めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つには教科書例文のデータベース化と分析に予想以上の時間を要したことがある。さらにコミュニケーション英語Ⅱと英語表現Ⅱの改訂版のデータベース作成にも予想以上の時間を要しており、2年目も分析の継続が必要となっている。 また学習者が考える良質な例文法例文の条件に関する調査についても依頼先や質問項目の再精査に時間を要した。但しこれについては、質問項目の再検討が終わり、依頼先も見つかり、現在調査を実施中であり、4月中には調査結果を入手することになっている。
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今後の研究の推進方策 |
まず教科書掲載の英文法例文ならびに言語活動用例の検討は引き続き行う。 学習者対象の良質な英文法例文の条件に関する調査では、新たに「指導開始時に示す例文」と「指導終了後にさらに示す例文」という観点で、質問項目も少し修正を行ったうえで調査を実施することとした。この結果と「文法理解」「暗記」という観点を組み合わせることで、より深い理論構築を試みたい。 また諺、名言、セリフ等の英文は昨年度より収集を進めて相当数蓄積されている。今後も蓄積を進めると共に、前述の結果を踏まえて例文の質に関する分別を進め、来年度に先生方が活用しやすいような例文集作成につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品については、昨年度の購入が予定未満であったためである。しかし、来年度は理論構築のための参考資料としての図書購入の増加が見込まれている。その他については調査実施が予定より遅れたことが原因として挙げられるが、来年度は活用する予定である。
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