研究課題/領域番号 |
17K02929
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中住 幸治 香川大学, 教育学部, 准教授 (20758875)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 英文法例文 / 提示時期 / 高等学校 / 学習者 / 質的条件 / 検定教科書 / 使用場面 / 言語の働き |
研究実績の概要 |
今年度はまず学習者が考える良質な英文法例文の条件について前年度に新たに設定した視点である、1) 初習時、2)基礎学習後にそれぞれ例文を提示する時に適した条件に関する調査を、4~6月にかけて県内の高等学校3校の2・3年学習者507名を対象に、例文の質に関する38条件の提示時期ごとの適格性を調査・分析した。その結果、初習時により好ましく思う条件として、英文が短いこと、語彙レベルが易であること、絵やイラスト共に提示されること、などが挙げられた。また基礎学習が終わったうえで提示する場合は、長い例文や語彙レベルが難化した文も容認されること、諺・名文・引用文などが挙げられた。さらに提示時期に関わらず評価の高い条件として、リズミカルであること、比較対照用の対となる文とともに提示されること、印象に残りインパクトがあること、使われる状況場面が明確であること、自己表現に応用できることなどが挙げられた。なお家族友人・学校生活・地元に関する例文についてはそれ単独では低評価であったが、これらが自己表現への応用・状況場面の明確化を前提として活用されると評価が上昇する可能性も示唆された。 さらに今年度も検定教科書中の目標文法事項が明確な言語活動や英文の活動例の収集をさらに幅広く継続する中で、過程で以下のことに改めて気づかされた。たとえ英文法事項の形・意味を習得し、簡潔な例文を暗記したとしても、それが使われる文脈・状況がつかめない限り使用することは困難である。その場面を自分で見つけ出すのは学習者にとって大きな負荷である。1冊の教科書内では1つの文法事項に対して行う言語活動の数は限られるが、複数の検定教科書に掲載されているものを取りまとめることで、特定の文法事項に対して使用場面・言語の働き等のバリエーションを包括的に提示でき、それが良質な例文条件に関する理論構築の重要要素となることがより明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の理由は、研究の過程でより効果的な収集データを見出したことと、そのためのデータをより充実させる必要性が生じたためである。特に初年度に分析を終えたコミュニケーション英語I・英語表現Iにも遡って改めて収集しなおしていることもあり、想定以上の時間を要している。しかし、研究の視点がより明確になったという意味では、有意義な回り道であったとも考えている。一方、学習者の視点については再調査により、学習者の考える良い例文の条件をより的確に把握することができたと考えている。ことわざ・名文等の収集についてはほぼ終わっているが、例文集作成については基盤理論がある程度固まった後、と考えているためまだ開始していない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、言語活動・会話例・文脈関係が明らかな例文等の分析を進めており、この結果を学会で発表し、そこで得られた指摘や忠告等を加味して、過去に行った学習者対象の調査結果と絡めることで文法事項ごとのコミュニケーションに応用可能で文法理解が進む英文法例文の条件に関する理論構築を目指したい。さらに時間が許せば、英文法学習用ELT教材中の言語活動・対話例の状況場面と比較したいと思っている。また、諺、名言等については十分な数が蓄積されたと思われるので、活用者が検索しやすい条件設定を固めた上でデータ化していく予定である。但し、その過程で著作権に関して注意を要する可能性があるため、確認をした上で作成を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品について購入予定を次年度としたものがあったため。翌年度の予算と合わせて購入する予定である。
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