本研究は日本人学習者における韓国語表記の使用実態を考察し,レベル別韓国語の表記指導法を開発することを目的とする。韓国語の文章を書く上で基本的な表記法である分かち書きは,韓国語の作文能力を評価する基準として重要な役割を持っているにも関わらず,日本の韓国語教育現場ではほとんど注目されてこなかった。そこで本研究では,まず,先行研究および最新の研究動向を検討するとともに,日本人学習者と韓国語教員を対象とし,韓国語表記に関する意識調査を行った。次に,日本人学習者の作文を収集し,データの処理・分析を行い,学習レベル別の分かち書き誤用の原因を明らかにした。また,最終目標として日本人学習者の使用実態に基づく韓国語表記の指導モデルを構築することを目指した。 本研究の研究成果としては,(1)日本人学習者における分かち書きの誤用分析,分かち書きの指導方法,オンライン辞書ツール使用が日本人学習者の作文に及ぼす影響,日本人学習者および韓国語教員における分かち書きの意識調査に関する論文発表,(2)「ハングル正書法(Hangeul Orthograph)」に関する国際シンポジウム開催,(3)日本人学習者における分かち書きの使用実態とその誤用の原因,分かち書きの指導方法に関する学会発表などが挙げられる。これらの研究を通して,日本人学習者における分かち書きの誤用は韓国語表記教育の不在の問題がかかわっていることが明らかになった。このことから実際の教育現場における韓国語表記教育の実態を再考する必要があることを認識できた。研究期間内に韓国語の表記指導法を開発するまでには至らなかったが,本研究は日本の韓国語教育における表記教育の現状と問題点を明らかにし,今後の韓国語表記教育の方向性を示唆するもので,今後の日本における韓国語表記教育へ大きく貢献できるものと考えられる。
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