研究課題/領域番号 |
17K02945
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金 惠鎭 日本大学, 商学部, 教授 (40399176)
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研究分担者 |
金 義鎭 東北学院大学, 工学部, 教授 (30364285)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アクティブラーニング / 韓国語会話授業 / リスニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ICTを活用した韓国語会話授業でのアクティブラーニング型教授学習を確立するため、モバイル端末を用いて学生に能動的学習を促す授業モデルの構築と、その学修支援システムを開発することである。今年度では、前年度から取り組んでいる多人数授業でも学修者全員に教員の指導が十分に行き渡る授業支援機能を有するシステムをGoogle Appsの基盤の上で実装・試作を行った。その際、開発に伴う環境構築のプロセスが複雑化するため、教員と学生の両方が利用に障害がないように、ユーザーフレンドリーシステムを目指した。具体的には、G Suiteを基盤としたWebアプリケーションのLMS開発の可能性を確かめた。その結果、教員側では、多人数授業で能動的学習を実践する学修システムのデザインを行い、発音教育の習熟度判定、正しい発音習得のプロセスの組み込みができた。一方、実践的アクティブラーニング用の韓国語会話教材のデザインでは、リアルタイムでの韓国語文章の校正システムや韓国語会話の例文データベース構築にはまだ至っていない。解決策として、データベースの例文数を減らし、人工知能や脳波計を用いたシステムも検討している。 また、平成30年度に行った研究成果の一部をまとめて、査読付き学術論文雑誌に投稿し、2本の論文が掲載された。それらの論文を以下に示す。①Analysis of Listening Acquisition Patterns in Korean-Language Learners: Beginning and Intermediate Learners(Journal of The Japan Association for Korean Language Education)②論理回路実験における潜在的ARCSモデルの活性化が学生の学習意欲に及ぼす効果(コンピュータ & エデュケーション)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度では、選択科目として韓国語を受講する学習者のプロフィールを収集・分析を基に、申請者らは多人数授業でも教員のきめの細かい指導ができるシステムをG Suiteで試みた。しかし、学習者のプロフィールの分析データと学習者の学習意欲は、必ずしも関連性があるとは言い難い。つまり、学習者の多様な背景要因により、それらの分析データ以外に個々の学習意欲を調べる必要があった。そのため、前年度に引き続き、申請者らは、学習動機すなわち学習意欲を引き起こすARCS学習意欲デザインプロセスの方略を改めて立て直した。その内容は、以下の3点である。 (1)以前、開発したスマートフォン用の電子教科書を見直し、習熟度・学習目標別の多様な学習に対応できる電子教材の開発、動画・音声・録音を組み込んだマルチメディアの活用、スマートフォン用に最適化した電子教材の作成を再度見直した。(2)理解度把握システムの試作:毎回の授業後、小テストを配信・受信・自動採点してフィードバックを実施、学習者の問題理解や解決方法を提示するシステムと学生個人の成績管理システムの開発にGoogle Appsを活用した。このAppsにより、簡単に韓国語会話教材を支える基本機能(得点集計、習熟度のビジュアル化、フィードバック)が構築でき、その活用可能性を再度確かめた。(3)協調学習支援システムの試作:学生参加型・誘導型の授業環境を構築、学生同士がペアまたはグループを組み、主体的な学びを促すシステムの開発をスタートさせた。 これらの方略が明確に定まってない状況で、現在予定した研究計画とはやや遅れている。そのため、今年度では脳波計を用いた学習者の学習プロセスも確かめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度では、学習者個々の学習意欲を脳波計で測定し、学習プロセスにおける個人差の重みを見出す予定である。この個人差をARCS学習意欲デザインプロセスに重み付けすることで、学習者個人に適した韓国語会話力の協働学習ネットワーク構築を目指したい。具体的には、平成30年度に引き続き、学習者の韓国語会話力を向上させるためのグループ別協働学習のネットワークを構築し、学生が単純な操作で即時に教員やグループ内に配信でき、学修交流を可能とするシステムまで発展させたい。なお、製作する具体的な開発項目と内容は次のとおりである。(1)韓国語会話による映像コンテンツ制作・配信:学生同士で韓国語会話による多様な映像コンテンツが制作できるよう、学生グループ内の学修交流ネットワークを構築する。(2)協働学習による字幕・シナリオ作成:学生間の教え合いと学び合いの相互啓発を目指す協働学習による韓国語字幕・シナリオ作成とその支援ネットワークを構築する。(3)グループ別の送・受信サービス:グループ専用の送・受信サービスを設けてデータ収集や回覧機能、レビュー書き込みなどを装備したネットワークを構築する。教員による指導コメント送信システムで円滑なフィードバックをサポートする。 申請者らはすでにモバイル端末のBluetoothやGoogle Appsを用いてマルチ型学習教材を構築している。これらのシステムに、脳波計で測定した学習者個人差の学習意欲の重みを付け加えることで、学習効果の有効性を確かめたい。なお、これらのシステムが開発できれば、本研究課題である、多人数の会話授業でも協働学習の教授・学習が可能となり、学修者が能動的で協働的に韓国語会話力を高める学修に取り組むように全面的なサポートも可能になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)学習者の韓国語会話学習プロセスをモニタリングする実験がやや遅れた。そのため、必要装備である脳波計の購入も少し延期している。また、資料収集のため、2018年度に韓国出張を予定していたが、学内・外におけるスケジュール調整ができなかった。 (使用計画) 2019年度に、韓国語会話学習プロセスをモニタリングする脳波計の購入と資料収集のための韓国出張に使用する。
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