研究課題/領域番号 |
17K02946
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 教授 (80442169)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | e-learning / コンピュータベースの発音訓練(CAPT) / 高変動音素訓練(HVPT) / 音素知覚 / 理解可能性(comprehensibility) / 調音 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人が英語を聞いたり、話したりする際の理解可能性(comprehensibility)を高めるための学習・指導法として、高変動音声(音素)訓練(HVPT: High Variability Phonetic/Pronunciation Training)の可能性を探ることである。本研究の特徴は、クラウド型HPVTプログラム“English Accent Coach”(https://www.englishaccentcoach.com/)を利用して、多様なアクセントの英語音声と刺激音素がランダムに現れる条件下で、反復して音素識別訓練を提供できることである。 1 年目(平成29 年度)の研究課題はHPVTの試験的運用として、日本人にとって知覚上困難な音素の絞り込みと訓練効果の検証を行うことであった。日本人大学生の英語学習者から研究協力の承諾を得て、同プログラムを利用した子音と母音すべてを選択範囲とした10回ずつの識別課題を実施してもらった。結果から、全体の平均知覚成功率は子音よりも母音の方か高く、母音の識別の方が難しいこと(子音87%、母音71%)、子音+/a/の音節環境における知覚困難な子音は摩擦音と/ l /および/ r /の音であること、子音/h/+母音の音節環境における知覚困難な母音は、日本語音の「ア」に括られがちな後舌広母音3つ、/i/を伸ばした前舌狭母音、「エ」に近い前舌母音、/u/を伸ばした後舌狭母音であること、などが判明した。また、10回の訓練効果として子音、母音の知覚成功率の伸び(子音11%、母音17%)および課題遂行時間の短縮(子音約30秒、母音約100秒)が見られた。これらのことから、英語音声学で従来から言われている調音困難な音素がHVPTの識別課題でも困難なこと、またコンピュータ利用のHPVTによる訓練の効果が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の2つ目の研究課題として挙げていた知覚困難音素に限定したHVPTによる指導前後の変化を識別率、調音率にもとづいて探ること、に関しては数値データの処理、音声データの処理に関わる作業が、予想以上の時間と手間を要しているため、数カ月程度の遅れが生じている。現在、データ採取とテストデータのスコア集計と統計処理は完了しているものの、音素別のテストデータ集計、また、トレーニングの過程における正答率の推移の集計、および、協力者の調音データを英語ネイティブスピーカーが聞いて成功率を判断してもらい正確さと理解度のデータを採集するリスナージャッジメントの作業が未着手である。リスナージャッジメントに関しては、カナダ側の研究協力者(ブロック大学トムソン教授)から現地での実施を承諾してもらており、音声ファイルの送付と評価実施を本年度前半に行ってもらうこととなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
途中経過を国内外の学会で発表しながら、遅れている分のデータ分析を着実に実施し、成果に付していく(8月LET学会[国内]、EUROCALL[海外]いずれも発表承認取得済み)。 2年目の前半は、HVPT課題を聞いてのみ実施するのではなく、声に出して再生しながら実施する条件とし、別の学習者集団に対して、/l/, /r/, /w/の3つの音素セットを踏襲しデータ採取を行う。これにより、調音付加条件での効果が比較できる。 また、計画当初からの2年目の予定である、別の音素セットでの活用を実施する。具体的には、1年目の研究結果に基づいて、摩擦音を中心とした複数の音素を目標とした判別課題セットを作成し、H30年度後半にデータ採取を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H29年度末に購入した物品のうち残額以上の費用のものがあり、次年度分と合わせて執行するため。
|