研究課題/領域番号 |
17K02946
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 教授 (80442169)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高変動音素訓練(HVPT) / コンピュータ利用の発音訓練(CAPT) / 知覚 / 調音 |
研究実績の概要 |
2年目の課題は、1年目の後半に収集したデータにもとづいて、インターネット上のHVPTプログラムEnglish Accent Coach(以下EAC)を教室の指導に応用し、知覚と調音の成功率にどのような効果をもたらすか実証を試みることであった。目標音素を/l/、/r/、/w/の3音素とした。研究協力者は非英語専攻の大学1年生2群で、音素環境として CV(目標子音+母音) とCVC環境(目標子音+母音+子音)の2つを設定し、10週間のHVPTによる指導期間を挟んで、事前・事後テストで効果を測定した。テストは各音素、各環境での知覚成功率、調音成功率をスコアとした。処遇は、毎週3回(授業内で1回、授業外で2回)、EACに各自アクセスし200音のランダムに呈示される刺激を聞いて選択強制課題を行うものであった。 3つの音素を混みにしたCV環境における知覚と産出の事前・事後テストの結果では、事前テストの正答率約70%から事後約84%(+14)へと向上した(効果量中)。音素別の結果は、/l/が65%から83%、/r/が53%から66%、/w/ が89%から99%へと伸びた。調音は、事前56%から事後69%(+13)へと伸びた(効果量中)。内訳は/l/が45%から64%、/r/が34%から44%、/w/が90%から98%だった。CVC環境については、知覚テストの事前データが入手できなかったため6週目(89%)と事後(94%)のみが得られた(+5)。初期の5週でかなりの伸びが起こった可能性が示唆された。調音は、事前59%から事後72%(+13)と伸びた(効果量中)。内訳は、/l/が61%から70%、/r/が27%から49%、/w/が90%から99%だった。 以上の結果から、知覚のみによるHVPTを集中的に行うことによって、音素知覚力の伸長とともに調音の力も伸びを示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度の後半に行った実験、すなわち調音を伴わない条件下での音素識別能力と調音能力の変化をみるためのデータ集計と発表活動を主に行った。音声評価や統計処理にかなりの時間を要した。前半は、2年目の課題として計画していた、調音を伴った条件下での訓練の効果を探るため、新たな協力者からのデータ採取を同時並行して行った。また、そのデータ処理を統計および人的評価を行う形で行った。後半は、初年度に明らかとなった日本人が苦手とする別の音素(摩擦音)について、English Accent Coachを用いてパイロット的にデータ採取を行った。しかし、2年目のような事前・事後テスト用の測定テストの作成は行っておらず、事前事後の音読課題で代用した。現在、EACの日常的な訓練結果のデータを用いた知覚成功率の集計と音読課題の評価作業に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目前半に採取した調音随伴の課題設定によるデータ処理を精緻化させて、調音が随伴しない条件のデータと比較を行い、その成果を発表する(Eurocall,2019、PSLLT, 2019)。精緻化とは、音素別の変化や、どの音をどの音として間違えたのか誤認事例の探索を含む。また、限定的な個別の学習者に焦点を当てたデータの精査やインタビューである。年度の後半は、/l/、/r/、/w/以外の目標音素として/f/、/v/、/θ/を設定しEnglish Accent Coachを用いて行ったHVPT訓練の結果と、音読による調音課題の評価を進めまとめ発表を行う。
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