研究実績の概要 |
3年目の目標は、2年目に採取したデータの分析と発表、2年間のデータを補完・拡張するための追実験を行い、HVPTを活用して知覚から調音に転化する可能性の高い発音指導法を試みることであった。2年目の前半に採取したデータ(/l/,/r/,/w/を目標子音としてHVPT実施中に刺激音を復唱する条件で10週間処遇)と1年目のデータ(知覚のみ条件でHVPT実施、10週間処遇)と比較を行い、知覚成功率の推移は同様であったが復唱条件の方が調音の向上の割合が大きいことがわかった。Bradlow他(1997,1999)の知覚のみ条件での調音転移可能性を追認するとともに、新たに知覚から調音への橋渡しとなる介入(復唱)の有効性を示した。 3年目は、HVPT復唱条件に、調音映像の視聴やテキストの音読時のハイライトによる視覚的インプット強化(意識化)を促し、調音の向上に効果が見られた。知覚の誤答分析から単音節条件の/r/を/l/と誤認する件数が最後まで残ること、調音では日本語のラ行代用が大幅に減ることが確認された。 事後の自由記述の分析から、誤認の要因として多様なアクセントによる影響を示す一方、多様な話者の英語に対応する準備ができたとのコメントもあり、HVPTの有効性が心理面にも示された。 以上の結果から、HVPTを一定期間処遇することにより、明示的な発音指導を行わなくても調音への転化が起こるが、復唱随伴条件、および明示的指導を伴うとさらに調音に効果が高いことがわかった。
|