研究課題/領域番号 |
17K02954
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 恒夫 同志社大学, 理工学部, 准教授 (60607258)
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研究分担者 |
山本 誠一 同志社大学, 理工学部, 教授 (20374100)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小学生 / 英語音声 / 追跡的分析 / フォルマント / 韻律評価 |
研究実績の概要 |
日本人小学生の英語音声について,身体的・知能的な発達,学習プログラムとの関係性を明らかにするため,数十名規模かつ継続的な英語音声収録を実施するとともに,まず英語単母音の発音に焦点を当て,フォルマント周波数と継続時間長の分析を行った.また,新しい韻律評価指標として参照付き母音継続時間長比の発案に至った. 英語音声収録については,6月に同志社小学校6年生全90名の音声を収録し,同じ児童に対する18ヶ月間の追跡的なデータ蓄積に至った.12月には音声収録第2ラウンドを開始し,同校の1年生全90名の英語音声を収録した.一方,同志社小学校を卒業した中学1年生についても追跡的音声収録を継続するため,中学校と交渉を進めている. 小学4年生から5年生までの3期12ヶ月,約40名分の小学生の英語音声について,母音区間のフォルマント周波数と継続時間長を分析した.その結果,成人の英語学習者と同様に,iyとih,uwとuh,aaとah等の似た音素の発音を調音で区別するのは難しいが,継続時間長により概ね区別できていることが分かった.また,追跡的に分析すると,平均的には発音の区別は進むが,発音の異化が進む児童と同化が進む児童が居ることが分かった. 継続時間長の分析を通じて,韻律自動評価向けの指標として参照付き母音継続時間長比の発案に至った.小学生音声に適用する前に,大学生の英語音声に適用した結果,5段階の主観評価値と客観評価値との相関係数を有意に改善した. 2018年度の学会発表は日本音響学会の1件であるが,小学生英語音声の分析について音声学の代表的な国際会議ICPhS 2019,第2言語音声獲得の国際会議New Sounds 2019の2件,韻律評価指標について信号処理の代表的な国際会議IEEE ICASSP 2019の1件,計3件の採録通知を受けており,2019年度の発表が確定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英語音声収録については,2016年12月の収録以来,同じ児童に対して18ヶ月間の追跡的英語音声データを蓄積した.収録した音声データに対して,正しい発声,読み誤り,復唱などの粗い分類を行うとともに,正しい発声に対して音素境界時刻を記録し,音素セグメンテーションデータとして整備した.英語ネイティブ話者による発音評価作業も一部実施し,2019年度に本格的に実施する予定である. 音声の分析については,3期12ヶ月,約40名分の母音区間について計測したフォルマント周波数と継続時間長を元に,同年齢の英語ネイティブ話者との比較,時期差比較を行った.それらの結果は査読付き国際会議に2件採録され,2019年度の発表が確定している. 継続時間長の分析を通じて発案に至った韻律評価指標については,まず日本人大学生の英語音声を用いて有効性を検証した.その結果は査読付き国際会議ICASSP 2019に採録されている.適用性の拡大を図るため,多様な音声データを用いた有効性検証と理論拡張の両面を予定している.
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今後の研究の推進方策 |
英語音声収録については,第2ラウンドとして同志社小学校2年生の音声を収録予定である.また,小学校に引き続き同志社中学校1年生の音声も収録予定である. 音声の分析については,単母音のフォルマント周波数,継続時間長,個人の変化それぞれについて,より多数の小学生の18ヶ月全期にわたる収録音声を対象とすることで分析結果の統計的信頼性を高め,2019年度中に論文化する予定である.2020年度以降は取り組み規模を広げる予定である. 韻律評価指標については,1)日本人以外の英語学習者の音声を用いた有効性検証,2)ネイティブ音声参照からアクセント辞書参照による簡便化,3)単語発声評価から文発声評価への理論拡張,の3つを進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,国際協力による英語ネイティブ言語聴覚士による音声評価を大規模に実施する予定であったが,ハブとなる国内研究者の都合により本件は2017年度より停止している.代わりに2018年度より国内の英語ネイティブ話者による主観評価作業を当初予定よりも小規模に開始している.2018年度にある程度信頼性のある結果が得られることが検証されたため,2019年度には本格化する予定である.また,2019年度は,既に採録通知が届いている国際会議発表3件の発表関連で約100万円,小学校に中学校も加えた音声収録に関わる作業で約40万円の支出を予定しており,音声評価の約26万円と合わせて,最終年度の166万円は余剰なく支出する予定である.
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