日本語を母語とする小中学生の英語音声について,身体的・知能的な発達,学習プログラム,外国生活経験との関係性を明らかにするため,数十名規模かつ継続的な英語音声収録を実施するとともに,まず英語単母音の発音に焦点を当て,フォルマント周波数と継続時間長の分析を行った.また,新しい韻律評価指標として2018年度に考案した参照付き母音継続時間長比において,英語母語話者の音声の代わりに発音辞書を参照する方法を考案し,理論の発展を図った. 英語音声収録については,2018年度に開始した同志社小学校における第2ラウンドを継続し,2年生全90名の英語音声を収録した.また,第1ラウンドの対象として昨春小学校を卒業した生徒,帰国子女の生徒を含む計40名の中学1年生の英語音声を夏と冬に2期収録した. 小学4年生から6年生までの4期18ヶ月,47名分の小学生の英語音声について,母音区間のフォルマント周波数と継続時間長を分析した.その結果,成人の英語学習者と同様に,iyとih,uwとuh,aaとah等の似た音素の発音を調音で区別するのは難しいが,継続時間長により概ね区別できていることが分かった. 韻律自動評価指標として2018年度に考案した参照付き母音継続時間長比について,英語母語話者の発声の代わりに発音辞書を参照する手法を考案し,大学生の英語音声を用いて主観評価との相関の検証を進めた. これらの研究成果について,ICPhS 2019,New Sounds 2019,IEEE ICASSP 2019の3つの国際会議と,日本音声学会研究例会,日本音響学会春季研究発表会の2つの国内会議で発表を行った.また,発音辞書を参照する韻律自動評価指標について,韻律に関する国際会議Speech Prosody 2020の採録通知を受けた.小学生の英語音声分析の結果を纏めた論文を日本音声学会に投稿した.
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