本研究は、日本語話者が中世朝鮮語の文献を、現代朝鮮語を学ぶことなく、日本語で直接に原文を解釈できるよう文法を記述し、基礎語彙表を作ることを目的とした。古語の文字、発音記号、旧字体、常用漢字体、現行ハングル、発音記号を同じ画面に入力するためのシステム開発に1年をかけ、その後「語彙表」の入力をはじめ、文法記述に必要な朝鮮古語の例文、漢文、書き下し文を電子化した。今年度はそれらを基礎とし、古語文法と杜詩諺解を古文、漢文、書き下し文を並べた読本を作成した。文法と読本を講義で用いたところ、読本で3つの言語を対照すると、古文の文法形態はあいまいではあるが自ずと推測でき、解釈の項で文法形態の膠着条件、機能、漢字を明示し、膠着語特有の現象については説明を加えることで、文法を学ぶことなくして原文を解釈できるようになった。この知見を生かし、古語の文法を簡単に触れたのちに、諺解(漢文を中世朝鮮語に訳した文章)と杜甫の詩(漢文)と書き下し文と解説を含んだ『杜甫の詩から学ぶ李朝のことば』というテキストを作成した。 これにより現代朝鮮語を学ぶことなく日本語から直接に中世朝鮮語の原文を解釈できるようにするという目的は達成できたと考える。テキストは現在のところ修正が必要であるが、修正後、ホ―ムページで公開する。
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