研究課題/領域番号 |
17K02967
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
木村 裕三 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (80304559)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 英語教育・学習の動機づけ理論の比較・精緻化 / 複雑系理論 / 活動理論 / 複線路等至性アプローチ / DMC / 東アジア3か国の中等教育機関の英語授業 / 質的データ研究 |
研究実績の概要 |
本研究は,4年間の研究期間を設定し,学校英語教育における動機づけの理論的精緻化を,後期中等教育課程(日本の高等学校)の教室を対象として長期間参与観察によって解明する質的研究である。具体的には,観察事象を主体者(授業者・学習者)と地域性(日本・中国・韓国)に着目し,動機づけに関する4つの理論(複雑系理論(CDST)・活動理論(AT)・複線経路等至性アプローチ(TEA)・Directed Motivational Currents(DMC))に基づいて解釈する。H29年度は日本(富山),韓国(水原),中国(北京)において,英語科全体の協力体制の確立(富山),これまでの協力者の転勤に伴う新しい高校での観察開始(水原),そして全く新しい中・高一貫校における観察の開始(北京)という,極めてスムーズかつ有意味な研究フィールドの確立が実現した。これに併せ,主として複雑系理論(CDST)と複線経路等至性アプローチを念頭に置いたデータ収集を実施した。まず富山では,これまで一部の英語科教諭の協力を得て来た富山国際大学付属高等学校から,英語科全体規模の研究協力を得られた。これによって,1年生6名の生徒とこれらの生徒を教える複数の英語教師の授業参観が実現し,そこから学習者と授業者の英語学習・英語授業に対する動機づけデータが収集できた。水原では,これまで8年間の本研究協力者の英語科教諭がH30年3月より新しい高校へ転勤となったため,H29年7月時点の城南外国語高等学校での実践からのデータと,H30年3月の京畿科学高等学校での実践データとの比較検証が可能となり,予期せぬメリットを掌握することができた。北京では,H29年9月の訪問より新しい小・中・高一貫校(北京理工大学付属中学)における実践観察が実現し,これによってH29年9月とH30年3月の2度にわたり,データが収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・日本サイト:富山国際大付属高校英語科の全面的協力が得られた。これにより,本研究者がこれまで同校の協力下で実施して来た,特定の同校英語科教員の授業に基づいた限定的な研究から,同校全体を視野に収めた研究が可能となった。具体的には、固定した6名(1-1, 1-2各3名)の1年生生徒に対し,共通した3名の英語教師の授業を継続観察出来ている。 ・韓国サイト:これまで8年間継続的に本研究者の研究に対して協力のあった英語科教諭が,H30年3月より前任の城南外国語高等学校から京畿科学高等学校へ転勤となった。このため,H29年7月に前任校での参観から収集したデータと,H30年3月に転勤先の高校での実践から収集したデータが比較出来るようになり,学習者・教育環境の差が授業者の英語教育への動機づけにどのような影響を与えるかが検証可能となっている。 ・中国サイト:H30年9月より,北京理工大学附属中学での授業参観と研究が可能となった。これにより,北京市内でも優秀な小学・中学・高校の一貫校での研究が可能となっている。加えて,偶然にも,2005年北京で初めて小学校英語授業を参観した際の英語教師が同校の小学部で教鞭を取られており,13年振りに授業参観とデータ収集が出来た。これにより,長期の時間経過を伴ったこの教師の英語教育に対する動機づけ分析が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
・平成29年度中に収集できたデータ量が予定以上に多いため、これらのデータ分析を迅速に進め、学会発表と論文発表に遅延なく進めること ・平成29年度中に観察できた各国のサイトで、同一学習者・同一授業者の英語授業を参与観察し、継続したデータを収集する ・複線路等至性アプローチの理論を本研究に精緻化する作業を行う ・文献研究を通じ、DMCの理論の本研究へ取り込む作業を行う
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