研究課題/領域番号 |
17K02967
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
木村 裕三 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (80304559)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 英語教育・学習の動機づけ理論の比較・精緻化 / 複雑系理論 / 活動理論 / 複線路等至性アプローチ(理論) / DMC / 東アジア3か国の中等教育機関の英語授業 / 質的データ研究 |
研究実績の概要 |
現地調査については極めて順調に進んでいる。まず、北京理工大附属中学では今年度2回の現地調査に協力いただいた。初回は2019/05/11-17の期間にこれまで協力いただいてきた文偉教諭と陳川教諭の実践・インタビューを収集することができた。また、2019/09/16-23の新学期において、陳川教諭が私事都合により別の高校へ異動されたのち、幸いこの新学期に新採用となった新任の英語教員(戴騰先生)の指導を学校幹部から依頼され、本研究の一環として戴騰先生への継続的な支援が可能となった。 水原(韓国)の京畿科学高等学校の現地調査は2019/11/04-08に元璋浩教諭を訪問し、その実践を録画・インタビューすることが出来た。水原についても研究協力に恵まれている。 富山国際大学付属高等学校(日本)の研究協力も順調であり、本年度は6名の3年生生徒とこれらの生徒の英語担当となった教諭について参与観察とインタビューを重ねることが出来た。以上のように、学校現地におけるデータ集中は極めて順調に進んできたと言える。 本研究の目的の柱である、複数の動機付け理論によるデータ分析比較について、これまで複線径路等至性理論による授業実践の読み取りを重ねてきた。本研究開始より昨年度まで、計2回の異なる事例を使った分析が終了し、今年度は更に異なる事例(具体的には富山国際大学付属高等学校の実践)を対象として学会発表を実施することができた。今年度の学会発表結果から、複線径路等至性理論による英語教育・学習の動機付け解釈に一定の安定的足場を作ることが出来た実感があり、次の研究局面へと進展させる基盤になる年度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北京、水原、富山のいずれのフィールドにおいても、学校幹部、関係教員との極めて良好な関係性を保持できており、一個人の研究ながら双方(本研究者と3か所の学校関係者)の利害に合致した研究となっていると考えられることから、3か所の研究フィールドでのデータ収集に関してはおおむね順調な進展と考えている。しかしながら、動機付け理論による事象の分析に関しては、現在のところ複雑系理論と活動理論、そして複線径路等至性理論の理論比較まで到達しているが、DMC(Directed Motivational Current)についてはその理論的枠組検討にもまだ到達していない。また、これまで順調に収集できている質的データについても、それらのソフトへの取り込み、質的分析の加速化が課題として残っている。その意味からすれば、データ収集の面に関しては昨年同様「当初の計画以上に進展している」と言えるが、収集したデータを整理・分析し、次年度へ進展させる局面を含めると、計画よりも「やや遅れている」と位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)収集したインタビューデータの質的ソフトへの変換を加速化させること。まずこれまでに収集してきた質的データの分析作業を前進させることが最も肝要である。質的研究の試金石はデータ分析を貯めないということである。その意味からも、学会発表と論文執筆をペースメーカーとしてまだ着手できていないデータの整理・分析・論文化へと推進方向を修正することが極めて重要である。 2)現時点までのSLA理論による同一データの分析を進めること。現時点までに英語教育・学習の実践データに援用したSLA理論は「活動理論」「複雑性理論」「複線径路等至性理論」の3つである。今後、同一のデータをこれら3つの理論により分析することは大きな意味があり、現地調査によるデータ収集は一段落させても、しっかりとしたデータ分析に研究の推進方向を切り替える必要があると感じている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2020年3月に予定していた北京における現地調査が新型コロナウィルス症感染防止の観点から渡航を取りやめたため。 繰越分については、最終年度(2020年度)にデータ整理・論文執筆のための支援ソフト、文献購入に充当する予定である。
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