今年度は、中国語と日本語の照応表現対照研究について、意味指向及びシンタクスにおける相違点を明らかにした。研究結果は国際学会で研究発表し、意味指向に関する内容は『漢日語言対比研究論叢』第10号に掲載され、統語における両者の比較研究は『第二言語習得中日対照研究「学習型」国際シンポジウム』論文集に掲載された。 中国語照応表現と日本語照応表現の第二言語習得研究について、母語影響の有無を明らかにした。研究成果を国際学会で研究発表し、論文が『静岡大学教育研究』に掲載された。日本語を母語とする中国語照応表現習得、英語を母語とする中国語照応表現習得、中国語を母語とする日本語照応表現習得、英語を母語とする日本語照応表現習得の比較研究は母語習得と第二言語習得の違いを明らかにし、6th International Conference on Chinese as a Second Language Researchで研究発表する予定である。 母語習得では、インプットからだけでは身につかない言語知識を身につけているということが知られている。この現象を「刺激の貧困」というが、もし母語習得と同様に、第二言語習得にも「刺激の貧困」が観察されれば、母語習得と第二言語習得には、共通のメカニズムが働いている可能性が高い。本研究から、中国語・日本語照応表現第二言語習得では、日本語母語話者・中国語母語話者のほうが英語母語話者より簡単に習得できるという結果が得られなかった。母語英語の中国語と日本語照応表現習得において母語の影響が観察されたが、母語中国語の日本語照応表現習得と母語日本語の中国語照応表現習得において母語の影響が観察されなかった。つまり、母語習得と第二言語習得には共通のメカニズムが働いていないと示唆された。
|