研究課題
本研究の目的は「英語コミュニケーション」に対する偏った自己認識(信条やイメージとしての解釈)が実際の英語コミュニケーション・スタイルやストラテジー にどのように現れるかを検証することである。平成29年度から助成を受けた本研究は、新型コロナウィルス禍によるオンライン授業などにより、予定していたデータ収集は全て行えなかった。平成29年度から令和1年度まで収集したデータ分析の結果は以下の通りである。1)英語による授業でのグループ・ディスカッションでは、英語母語話者、非英語母語話者に関わらず、留学生が同じグループにいる場合、日本人学生の発話が圧倒的に少ない。そして、インタビューの中で日本人学生は、自己の意見や回答に自信があるときに発話をするが、一方で発話のタイミングを見極めるのが困難であると語っている。2) EPT(English-taught program)に属する学生のインタビューからは、English-medium instruction (EMI)の授業で用いられるアクティブ・ラーニング(学生中心で積極的な意見交換や発言を促す)方式が、知識伝達型の授業形態に慣れている日本人学生の心理面に大きく影響し、英語コミュニケーションに対する消極的な態度につながっていることが示唆された。3)対話者が母語話者の場合、英語学習者アイデンティティが顕著になる一方、同じ非英語母語話者の場合、L2英語使用者アイデンティティが表出する。最終年度はEMPの1年次に記述アンケートのみを実施した。記述回答の分析から、オンライン授業でチャットを用いて意見を求めても正誤にこだわる学生は書くことに消極的である、グループディスカッションでは思ったように意見がまとまらず沈黙になるという傾向が見られた。ただし、3か月後には記述の中に「議論」ということばが用いられるようになり、グループディスカッションへの取り組みに変化が見えたことを示唆する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Language, Identity, and Education
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