研究課題/領域番号 |
17K02974
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
阪上 辰也 広島大学, 外国語教育研究センター, 講師 (60512621)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | コロケーション / 心的実在性 / 学習者コーパス / 第二言語習得 / 学習者コーパス / 視線計測 / 定型表現 / 言語処理 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては,ライティングタスクを通じての分析用データ収集を中心に行った。調査協力者は,中国地方にある国立大学の理系学部1年生24名であった。協力者に対し,アカデミック・ライティングの基本を学ぶ授業の序盤と終盤において同一テーマによる英作文課題を与え,データを収集した。具体的には,辞書等の参照物の閲覧を禁じた状態で,50分の時間制限を設け,「学校教育」というテーマによる英作文の課題を実施した。作文データに含まれる2語および3語単位での言語表現に着目したところ,収集時期に関係なく,I think (that) や there is/are といった表現や,テーマに深くかかわる teacher(s)/student(s) を含んだ名詞句を多めに産出する傾向が見られた。一定期間を経てもなお,同様の産出傾向を示していたことから,そうした表現がコロケーションとして保持され,その心的実在性が高いものであると推察される。また,日本語とは大きく異なる後置修飾の事例として,関係詞を含んだ構文の産出状況に着目したところ,whoを含んだ事例が他の事例よりも多く産出されていることが分かった。関係節の産出には先行詞の有生性が影響すると言われていることから,名詞を含んだコロケーションの分析に際しては,構文としてのコロケーション知識の運用能力,および,有生性の影響を踏まえつつさらに分析を進める必要がある。なお,コロケーションの認知実験に際しては,各種コーパスデータから得られる頻度の高いコロケーションと、頻度が低い2語以上の組み合わせを実験項目として選定しているところであり,構文レベルでのコロケーションについても調査中である。コロケーションの心的実在性に影響を与える要因として,頻度に限ることなく,有生性についても考慮し,各種要因統制を行った上で,読解実験を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,ライティングタスクの予備実験および本実験を行い,データの収集を行なっている。さらに,コロケーションの認知実験についても,データ収集に向けての準備が進んでおり,概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,ライティングタスクおよびコロケーションの認知実験の本実験を行う予定である。特に,コロケーションの認知実験については,コーパス調査に結果から得られる頻度の高いコロケーションと、頻度が高くない2語以上の組み合わせからなる表現を実験項目として含んだ英文を学習者に読解をさせる計画である。実験によって得られたデータの分析を行い,平成30年度後半から学会発表および論文投稿を行うことを計画している。 現在,実験参加者を募集しているものの,コーパスおよびデータベース構築に必要な人数が集まっていないことから,所属先の教員等を通じて,実験参加への呼びかけを行い,分析用のデータ数増加を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,実験調査の規模が小さく,また,情報収集を行う機会が予定よりも少なくなったことで,支出が予定よりも小さな額となった。次年度以降については,まず,データ解析用のワークステーション購入のために研究費を使用する予定にしている。さらに,7月以降は,実験参加者に対する謝礼金支払いのために使用し,海外を含めた複数の学会参加のための旅費,および,論文校正にかかる費用として研究費を使用する計画である。
|