研究課題/領域番号 |
17K02977
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 みゆき 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (60241147)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | e-tandem / 読み手意識 / 意見文 / 転移 |
研究実績の概要 |
本研究は、お互いの第2言語での作文をオンライン上で交換するe-tandem(双方向型2言語通信)という形式を通じて、第2言語での「読み手の背景、読み手との関係等を考慮に入れ、その場にふさわしい文章を産出する能力;以下、読み手意識」がどのように発達するかを、2つの学習言語を対象に比較調査することを目的としている。初年度(H29年度)に、本研究者が米国に8週間滞在した際、データ採取の機会を得たため、当初の目的を超えて、英語を第1言語とする日本語学習者(H29年度にデータを採取済み)と日本語を第1言語とする英語学習者の「読み手意識」の発達を第1言語と第2言語を入れ替えて比較することが可能となった。 このため、H30年度には、日本での英語学習者がe-tandemを通じてどのように「読み手意識を発達させていくか」を観察した。使用ジャンルはH29年度と同じ「意見文」とし、研究デザインはH29年度と相似形をなすように企画した。まず、H29年度で使用した型を土台に、e-tandemの機能を持つPlatformを作成した。次に、日本語を第1言語とする英語学習者(大学生)6名と英語を第1言語とする日本語学習者(大学生)6名とで、お互いの第2言語による作文交換を6週間にわたり行った。現在までのデータ分析の結果、(1)e-tandem形式は、英語を書く力や英語力一般を向上させようとする動機づけや、オンライン上の「読み手意識」を向上させる;(2)実験群と統制群を比較した場合、教室での紙媒体の意見文への「読み手意識」の転移には、媒体を超えた「ジャンルの相似性を意識すること」が関係しているようだ、ということがわかった。H31年度には、H29年度とH30年度に分析したアンケート項目の量的結果分析だけでなく、参与者が記述した感想などの質的データの詳細な分析を基に、日英双方向からの示唆を探る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究者は、初年度(H29年度)に安倍フェローシップの基金を得て、アメリカで日本語を学ぶ英語母語話者がどのように日本語での「読み手意識」を発達させるかについて、長期的(週に1度の日本語話者との作文交換を6週間)にデータを取得することができたため、当初の予定であった「日本人英語学習者のオンライン上の英語ライティングの読み手意識の発達」のみではなく、対象学習者の第1言語と第2言語を入れ替え、反対の立場からの第2言語学習者の読み手意識の発達と比較し、より汎用性の高い結果を得られることが期待できるようになった。又、対象ジャンルも、当初、e-tandemの作文のジャンルをブログのようなアカデミックでないものに設定していたが、先行研究の結果から、e-tandem自体の作文がアカデミックなものだと、紙媒体のアカデミックな作文にも「読み手意識」が転移しやすいことがわかったため、初年度から、使用するジャンルをアカデミックな「意見文」に設定し、オンライン上のライティングから紙媒体でのライティングへの「転移」を日英両方の第2言語ライティングで比較・観察できることとなり、研究設計をより立体的にできた点は幸運だった。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に述べたような理由により、H29年度には、第1言語が英語、第2言語が日本語、H30年度には第1言語が日本語、第2言語が英語の学習者のライティングにおいて、オンライン上の「読み手意識」の発達と、「オンライン上の読み手意識が紙媒体の教室での作文に転移するか」に関する多くの量的・質的データを採取した。これまでの中間報告では、このうち主に量化できるデータ分析の結果を報告してきた。研究最終年度となる令和2年には、H29年度とH30年度に採取したその他の様々な質的データも分析に加え、学習者の「読み手意識」の変化に影響を与える要因を、背後にある教育経験や社会文化的背景の中に探る多面的分析結果を出したい。このように第1言語と第2言語を逆転させた上で比較した研究は、国内外でも珍しく、多くの多角的視点からの示唆が得られることが期待される。又、これらの実験に伴って、国内でもあまり報告がないe-tandemのためのPlatformの改善も同時に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究者は、H30年1月末に目の手術をしたため、予定していた3月9日から12日に開催された全米応用言語学会年次大会への参加と発表(査読付)をキャンセルし、残金が生じた。この残金はH31年度の予算に組み入れて、学会参加等のための費用に使う予定である。
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