研究実績の概要 |
「ランゲージング」(Swain, 2006)とは外国語学習者が疑問に感じたことや自らの言語使用を振り返る際に、それらについて話す、または、書いて理解を深める学習プロセスである。これまで口頭ランゲージングに関しては学習促進効果が多数報告されているが、筆記ランゲージングは近年研究が始まったばかりで(例えばIshikawa,2013, 2015; Suzuki, 2009, 2012)、まだ解明されていない点が多い。そこで、初年度は筆記ランゲージングと学習者要因(言語適性)の関係解明に焦点を当て、事前テスト・処遇・事後テストのパラダイムで実験を行い、筆記ランゲージング学習促進効果を検証した。
主な結果は、筆記ランゲージングを行わないグループでは事前事後テスト間の伸びと適性の相関が多数見られたのに対し、行ったグループでは目立った相関が無かったことである。このことは筆記ランゲージングが学習者の適性に関係なく学習を促進すること、つまり、適性の低い学習者にとって筆記ランゲージングがレメディアル指導になり得る可能性を示唆しており、適性処遇交互作用の概念とも共通するものである。これらの結果・考察は第43回全国英語教育学会島根研究大会で口頭発表を行い、本研究課題の成果を広く発表するとともに、発表参加者から有意義な意見や助言を多数得ることが出来た。更に、筆記ランゲージングと学習者要因についての論文を執筆し、年度末には海外学術雑誌に掲載された(System, Elsevier出版)。
また、筆記ランゲージングと各種テスト(文法、翻訳)の相関関係を分析したところ、全体的に正の相関が観察された。つまり、豊かな筆記ランゲージングを行う学習者ほど、よりテストの成績が高いということである。この結果は、平成30年度第44回全国英語教育学会京都研究大会で発表予定である。
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