研究実績の概要 |
2019年度は、日本人英語学習者の接辞知識の習得順序を調査した。日本国内外でこれまでに行われた研究では、語彙サイズと接辞知識との間に中程度の相関関係があることが認められている(Schmitt & Meara, 1997; r = .41, Mochizuki & Aizawa, 2000; r = .65)。しかしながら、これらの研究では、動詞にのみ適応される接辞の知識が問われていたり、疑似語を用いて接辞の知識が問われていた。 したがって、本研究では、実在する語を用い、また、受容・発表の両側面の接辞知識を調査することにより、接辞の習得順序や語彙サイズとの関係についてさらに調査することとした。なお、本研究では2018年度に行った調査で使用した発表的接辞テストに改良を加え、より「発表的」な知識の測定を目指した。 100人の日本人英語学習者に対し、120問の語彙サイズテスト、産出的接辞テスト、受容的接辞テストをそれぞれ一週間の間隔を開けて実施した。産出的接辞テストでは、与えられた接辞に対して、3つの語幹を解答する形式のテストとした。語彙サイズテスト、および受容的接辞テストは選択式のテストとした。2つの接辞テストは、15の接頭辞と15の接尾辞を共通の問題項目として使用した。 実験の結果、語彙サイズと接辞知識との間には、中程度の相関が認められた(受容: r = ,73; 産出: r = .62)。また、各接辞の正解率を元にした、習得順序の比較では、受容的知識と産出的知識の間に大きな違いが見られた。特に-(a)tion、-y、-antは受容知識としての順位は高いが、産出知識としての順位が低く、逆にdis-、mis-、inter-は産出知識としての順位は高いが、受容知識としての順位が低いことが明らかとなった。
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