本研究の目的は,異文化間コミュニケーションの場面において、個人のパーソナリティが非言語行動と感情表現にどのような影響を及ぼすのかを実証的に検討することである。当該年度においては,個人のパーソナリティが非言語行動に与える影響を探る一環として,実用的な面への拡張を念頭に他学問分野との連携を図り,学際的研究に取り組んだ。具体的には,経営学の予算管理研究と連携し,Big Five性格特性とマネジメント・コントロールに関する探索的な研究を行った。 この研究では,パーソナリティを測る共通尺度として広く使われるBig Fiveを用いて,予算管理研究への応用可能性を検討した。特に,予算編成に参加する下位マネジャーのパーソナリティ特性が,組織における予算目標設定や予算目標達成にどのような影響を及ぼすかに注目した。その結果,下位マネジャーの外向性が予算スラックに正の相関を,誠実性が負の相関を持つことを暫定仮説として導いた。また,情緒不安定性ないし神経症傾向を持つ下位マネジャーのパーソナリティ特性が予算目標の達成可能性に対する主観的確率と負の相関があるという仮説も導くことができた。 本研究の意義は,異文化間コミュニケーションにおけるパーソナリティの影響の知見について,経営学という異なる分野への応用を図ったことである。具体的には,上位マネジャーと下位マネジャー間の異文化間コミュニケーションを想定し,パーソナリティが非言語行動に与える影響を予算管理の文脈で研究することで,パーソナリティ特性に関する学際的研究の新たな可能性を見出している。
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