多文化人材の異文化交流のプロジェクトにおける、短期間の間にどのような異文化適応がなされているのかについて面接調査を行い質的分析の結果をまとめた。外国人留学生を対象とした調査からは、「巧遅志向の自己開示」「距離感によるプライバシー確保」「コミュニケーションの機能不全」他9つの概念が見いだされた。これらの概念を更に概念づくりの段階につなげていく。 また、日本人学生を対象とした、国際教育プログラムにおける多文化環境におけるでの協調的問題解決スキルについても調査を行った。日本人学生と外国人留学生が協力して地域コミュニティーにおいて国際教育活動を展開する中で、リーダー役の学生がどのようなメンバー間の関係性認知をし、どのような多文化集団が形成されていくのかについて明らかにした。質的分析からは、関係性の認知について、「盲目的信頼の崩壊」や「日本人集団内ポジションの確立」を含む10個の概念と、「外国人との固有の関係形成」を含む4つのカテゴリーが抽出された。日本の社会文化的な環境の中で起こる異文化接触の教育上の課題として、日本人学生が集団を形成したりリーダーシップを取ろうとする対象に、外国人が同等な立場の人材として含まれにくいという点があることが浮かび上がった。しかしながら、日本人同士の集団の関わり中で起こる対人葛藤とそこから生まれる対人認知が、異文化間の関係作りへのきっかけとなる可能性が浮かび上がった。同集団内・外における様々なレベルの違いにどのように対処していくかの資質能力の育成が、英語教育の中にも組み入れられていくことが新たな課題として浮かび上がった。
|