最終年度は3番目の研究課題「単語テストに対する個人の関与」を実施した。単語テストを実施する場合に,教師が選んだ単語のテストを受ける群(統制群)と,自ら選んだ語のテストを受ける群(実験群)ではその結果に差が生じるかどうかを検証する研究である。どちらの群も本学のTOEIC対策コース授業の中で実施された。テキストの2課分(20語×2)に当たる40語を目標語とし,プレテスト,学習,2度のポストテスト(直後と1か月後)を実施した。テストはすべて英語の目標語の日本語訳を書かせるテスト(L1リコールテスト)である。授業では,各課の20語を対象に,目標語とその日本語訳を載せたリストを配布し,意味を確認した後,ペアで問題を出し合う活動をさせた。その翌週と2週後に20語のうちから5語の意味を問う小テストを行った。統制群では教師が選んだ5語についてテストされたが,実験群では各参加者がテストする5語を選び,自らテストを作成し,翌週及び2週後にそれぞれ自作のテストを受けた。参加者はすべて本学の英語専攻の学生で,同じTOEICの授業を受講したものである。ただ,統制群は昨年度に実験を行い,実験群は今年度の実施となる。 両群のプレテスト,2度のポストテストの結果を一般化線形モデルによる統計テストにかけたところ,有意な交互作用はなかった。しかし,両群ともプレテストの結果より,2度のポストテストの得点が優位に高かった。統制群の正答率は36%-87%-75%,実験群は34%-86%-73%と変化し,それぞれのテストで両群に大きな差は見られなかった。テストに関する個人の関与はテスト結果に影響を及ぼさなかったという結論になる。この理由としては,小テストで扱う単語は全体の半分程度であったこと,また実験群ではすでにテスト内容を知っていたことが影響したと思われる。
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