研究課題/領域番号 |
17K03007
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
巽 徹 岐阜大学, 教育学部, 教授 (10452161)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小学校英語教育 / 文字認識 / 英語の文字指導 / 読むこと / 短時間学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校5・6年生の児童が英語の文字認識をどのように行っているかを把握し、英語を「読むこと」「書くこと」に抵抗なく取り組めるような指導の在り方を模索することであり、本年度が2年目である。岐阜県内の公立小学校4校の5・6年生全員と中学校1校の1年生の協力を得て「英語の掲示物クイズ」を実施した。 これまでの研究から、小学生が英語の掲示物を見る際に、「主に文字(単語)の形や見た目に注目する児童」と「主に文字(単語)の意味に着目する児童」が存在することが分かった。中学生は、ほぼ全員が意味に注目するのに対し、小学生では両者が混在する昨年と同様の結果が得られた。このような小学生の文字(単語)の見方の違いは、それぞれの児童がこれまでに英語に触れてきた時間(学校内外での「総英語学習時間」)の違いに関係することが予想され、本年度の調査では「総英語学習時間」が200時間を超えると「意味」に注目する児童が増える傾向が見られ、昨年度の調査結果を支持する形となった。 また、本年度の調査では、児童のアルファベットの大文字・小文字の認知に対する自信の程度を新たな分析項目として追加した。アルファベットの認知に対して自信のある児童は、そうでない児童に比べ英語単語の「形や見た目」ではなく、英単語が表す「意味」により着目することがわかった。アルファベットの認知に対する自信の差が、英語の文字(単語)認識に何らかの関係があることが予想される結果となった。 4年間継続して調査を行っている学校のデータから、どの年度の学年集団においても学年が進行すると単語の意味に注目する児童の数は増えているが、その増え方は年度により増減がある。その要因として、調査対象校における短時間学習や英語の文字指導の有無・頻度・内容の違いが影響していることが考えられたが、その特定には至っていない。今後のさらなる調査が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5校の調査協力を得て、昨年に続き継続的に調査とその分析が実施できている。経年の変化を継続的に調査させていただける見通しもあり、調査の項目についても改善・発展が図られている。また、今後の調査協力校との交渉も進んでおり、さらなる研究の深化が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
既に調査協力をいただいている学校については、継続して調査を依頼し、児童の学年進行と英語の文字認識、単語の認識等の変化について分析していく。また、アルファベットの認知度と英単語の認識の関わりや児童の総英語学習時間と英単語認識の関わり、それぞれの学校の英語文字指導の内容と英単語認識の関わりについて、今後も調査分析を継続していく計画である。 2019年度で、新学習指導要領への移行措置期間が終了し、2020度より多くの調査校で英語授業時間の増加が予定されている。2020年度以降は学校の授業時間のみの学習で合計210単位時間の学習となる。この時間は、本研究で明らかとなった、児童が英語の単語認識を行う際の異なる認識方法「形中心」から「意味中心」への境となる目安の時間数であり、今後どのような変化がおきるのか、関心が高まるところである。本事業は2020年度で終了となるが、助成事業終了後も、継続的に調査を行い児童の英語文字認識過程の解明とそれに基づく指導法の開発を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた研究会に校務により日程が合わず参加できなかったため。次年度の旅費として使用する計画である。
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