研究実績の概要 |
2017年度から2020年度の4年間で、のべ 4,700名余りの小学校 5,6年生の児童を対象に、学校内の英語掲示物の表記や授業内で文字が示される単語の意味を児童がどのように認識しているのかを調査した。調査では、「文字で表記された英語の単語を見て、仲間外れを選ぶ」設問を設定し解答選択の理由を分析した。この設問は、児童が日頃から音声で十分に慣れ親しんでいる「月の名前、曜日の名前」などの基本的な単語の英語表記を見て、その発音を想起し意味の理解に至れるかを測ることを目的とした設問であった。その結果、「英語の単語の意味」に注目して判断しようとする児童と、単語の長さや文字の太さの違い、共通の文字の有無(語尾の y)など、「英単語の見た目や形」に注目して判断する児童とが存在することが分かった。 研究の結果、認識の仕方の違いを生む要因は、学年の違いや英語学習への興味・関心の差ではなく、これまで各児童が学校内外において英語を学習した「総英語学習時間」の違いによることが明らかになった。つまり、音声で十分に慣れ親しんだ基本的な英単語であっても、文字を見てその発音や意味を想起できるようになるには、児童の「総英語学習時間」がある一定時間に達していることが認識を可能にする要因の一つであることが明らかになった。具体的には「総英語学習時間」が 200時間~220時間に達する児童では、8割以上が意味を理解し意味に注目して判断しているのに対して、200時間に満たない児童では、200時間以上の児童に比べて「英単語の見た目や形」の特徴を優先させて判断している児童が多く、意味に着目して判断する児童も8割には達していないことが分かった。
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