研究課題/領域番号 |
17K03010
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
柏木 賀津子 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (40549052)
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研究分担者 |
種村 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30263354)
宍戸 隆之 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40331962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CLIL / 文構造への気づき / 教科特有の言語 / Dual Focused Assessment / Usage-Based Model / 海外教育実習 / 手続き的知識 / 小中連携の英語 |
研究実績の概要 |
小学校外国語(英語)の教科化では, 「聞く」「話す」に加え文字指導や英語の文構造への気づきが重視される。また,中学校外国語科では意味のある内容における「やりとり」と切り離さない文法習得が大切となる。本研究は,小学校英語で触れたひとまとまりの表現(Formulaic Sequences: FS)を中学校の文法指導に関連付けることが大切であると考える用法言語基盤モデル(Usage-Based Model)を理論的根拠とし, Focus on Formの指導法やToken頻度からType頻度への進捗の場面での文構造への気づきを引き出す指導を提案する。その際, 高次の思考を引き出すCLILの指導を用い, 教科内容(理数・体育等)が深まる思考場面で, FSを何度も使う言語活動を創り出し,言語運用に必要である手続き的な文法知識を高めていく。 平成29年度は、1)「小中連携の英語教育における文構造への気づきおよび文法獲得、2)小中学校両方でのCLIL実践における教科内容の深化、1)と2)の関連性と2元的評価(Dual Focused Assessment)を行い、言語能力と教科の深化の関連と相互補完的効果について考察を行い、国際学会での発表を行い論文を発表した。また、CLILを活用したフィンランド(EU)海外教育実習のプロジェクトを実施し、学生と院生が,フィンランドとイタリアの小中学校でCLIL授業を行った(理科・体育・演劇)。成果は教員養成高等教育機関との国際連携にも繋がった。言語能力と、教科特有の言語(subject specific language)に着目した知識構築の変容について国際学会でも成果を発表した。本研究の成果は国際化する社会における英語による言語力と複合リテラシー(Pluriliteracies)の育成へのCLILの積極的関与を実証するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実践面では、フィンランド(オーボ・アカデミー大学)・イタリア(ロマーノ・ブルーニ校)において海外教育実習を実施した(11月)。半年間の大学院生と学部生が半年間の協働の後、CLIL授業を実施しデータ収集を行ない、成果報告会では延べ60名近い参加者を得た。海外教育実習には、グローバル教員養成の5つの要素を取り入れている(Global Perspectives, English competencies, Multidisciplinary Collaboration, Data Analysis, 21st skill)。また、言語面と教科面のDual Focused Assessmentを提案し、評価を得ることが出来た。また、成果の普及に向けて、研究者らは日本CLIL教育学会(J-CLIL)に参加し、その西日本支部(J-CLIL West)を立ち上げた。2018年3月発足研究会には140名の参加があり、小中高校のCLIL実践発表とワークショップを行った。研究面で2017年8月全国英語教育学会課題研究、および、2018年1月Hawaii international conference on educationで発表を行い、プロシーディングスが掲載された。2017年11月カナダの国際誌「English Language Teaching」において、中学生の文構造への気づきについての論文が掲載された。小中連携の英語における文字指導の研究について、JACET関西(2018年3月)に論文が掲載された。次期学習指導要領に向けて、思考力を育てる英語としてのCLIL、文構造への気づき、文字指導の方法の3点について、エビデンス・ベーストの授業モデルを構築することが出来た。CLILを取り入れる公立校やSGHが増える中、異校種・異分野連携のCLIL実践研究は今後の拠り所となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1)ヨーロッパやアジアの海外教育機関連携の拡充と深化を行い、国際共同研究に向けて準備を進める。海外教育実習の枠組みと成果について学会、論文、著書をとおして普及する。 2)CLIL実践と文法指導の相互補完的な指導方法を提案すると共に実践成果を学会や講演で普及する。文構造の気づきについては、さらに論文執筆と著書執筆を行う。 3)言語面と教科面の深化の両面からDual Focused Assessmentの方法についてモデル提示を行う。 4)日本の小中学校教員養成、および連合教職大学院における修士レベルでの「言語と教科」の統合を図り,複合リテラシーと複合的視野を備えたグローバル教員養成に向けてのシラバス提案を行う。 さらなる研究の基盤としては、国内・海外との研究連携を深め国際共同研究を行うための基盤づくりを行う。研究の拡充においては、今年度の究において、CLILをとおした学習者の積極的変容は、言語能力面だけでなく、他教科の内容(Content)の深さと専門性の重要性が明らかとなってきた。またこの2側面は互いに影響し合うことが観察され、両側面からの形成的評価や相互補完的な言語認知力の育成にむけて研究を進める。研究成果の応用としては、教員養成大学や教職大学院におけるグローバル教師育成のプログラムの準備を行い、そこに参画する研究者や現職教員のCLILによる思考力を深めるアクティブラーニングの授業指導力を高める。また、21世紀型スキルを備えた教員育成のための指標を作成し、参画者の取組をとおした変容のデータ分析を行う。
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備考 |
CLILを活用したフィランド・イタリアへの授業訪問と授業分析結果について報告すると共に、両国やEU諸国のCLILによる21世紀型教員養成についてまとめた。(研究結果は、Internatinoal Conference on Quality of Bilingual Programs in Higher Education等で発表した。)
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