研究課題/領域番号 |
17K03010
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
柏木 賀津子 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (40549052)
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研究分担者 |
種村 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30263354)
宍戸 隆之 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40331962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CLIL / 教科連携 / 文構造 / カリキュラムマネジメント / オンライン国際交流 / SDGs / グローバル教育 / COIL |
研究実績の概要 |
本研究は、用法基盤モデルに基づく、小中学校の英語教育指導内容の連携と文法指導を関連付け、その上でCLIL(内容言語統合型学習)の指導を行い、教科内容(理科・体育・環境)が深まる思考場面での英語使用を創り出し、言語運用を行っていく授業実践を提案するものである。令和元年~2年度は、国内外のCLIL実践者との国際シンポジウムや、フィンランド等ヨーロッパの教育機関へのCLIL訪問授業を実施し、それらの成果を香港の教育学会でプレゼン発表を行い優秀論文学会賞を授与された。CLILに関する共著書を4冊発刊した(大修館書店・明治図書・くろしお出版等)。令和2年度は、新型コロナ感染症のため海外訪問は出来なかったが、オンライン学術交流や研修、コロナ禍での教師ネットワーク創りを行った。CLILでは「内容と思考」に引き込まれるため、ZOOM講義でも関心が寄せられた。大阪府下教育委員会、Teacher For Japanなどと連携し協働的問題解決力の育成や、21世紀型スキルの育成を行い教員の21世紀型スキル尺度(Edu21st)を作成した論文が査読付き論文として採択された。令和3年度はオンライン時代に対応して、理数CLIL(紙飛行機の揚力や慣性のホ法則活用)、体育CLIL(英語と球技、脳と運動機能に関連して)および、SDGs・環境CLIL等について国内外で実践した授業ビデオクリップをホームページで公開している。また、新学習指導要領改訂で新教科書が発行されが、地球環境SDGsの内容も取り入れた(環境、水の大切さ、食品ロス等)。本科研での成果の取り組みはNITS採択で、「グローバル教育オンライン研修8講義」として学校現場との双方向研修を実践した。ユバスキュラ大学CLIL研究者らと学習者Agencyを伸ばすCLILについて、COIL型国際学術交流セミナーを開催し、全国より100名近い参加があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由 令和元年~令和3年へと計画以上に進展したと判断する理由は主に3点である。1)研究の成果を広く発信し検定教科書の執筆、および著書4冊発刊ができたこと、2)公的な枠組みで学校の教員研修への貢献が出来たこと、3)フィンランド等海外とのCLIL研究者と連携したことである。具体的には、①著書・オンライン研修による全国への発信ー著書ランキングでも高位を保つなど全国からの関心が寄せられた。②コロナ禍でも大阪府下の教員に配信するCLIL研修、北海道教育大学の教員養成研修のCLILと文構造オンデマンド講義を配信し、多数の教員に視聴いただいた。大阪府等自治体と連携のグローバル教育研修ーNITS採択プログラム(https://www.nits.go.jp/education/)として「グローバル教育オンライン研修8講義」を実施した。次の4つの流れを取り入れた。対話型研修の方法、CLIL・STEAMの授業展開ワークショップ、SGH等COIL型交流、カリキュラムマネジメントの実際である。受講者は、自校のカリキュラムマネジメントや英語研修に取り入れ、CLILと文構造の関係を明らかにし、学力進捗を評価しながら教科内容を深める方法は、小学校から高校までの教員から高い評価を得た。③国際学術交流としては、2021年1月には、イタリア文部科学省の研修トレーナーのSilvana Rampone(ピネロロ市教育委員会)を招聘し、EUのe-TwiningサイトとCLIL教材共有について講演を開催した。5月にはユバスキュラ大学のJosephine Moate氏、フィンランド国立教育研究所、矢田匠氏、イースタン大学、矢田秋恵氏を招聘し、CLIL授業と学習者Agency育成について議論した。教員の21世紀型スキル(Edu21st)スケール開発を行い、査読論文として採択され、グローバル教育評価ツールとして引用されている。
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今後の研究の推進方策 |
大学や高等研究機関では、通常、専門分野が独立しており、異分野のコラボレーションが学生および現職教員の専門知高揚において相乗効果をもたらすという点でのCLIL研究は極めて少ない。本研究は、前述のように、実践と理論の往還を行い、また理数や体育・芸術等、アカデミックコンテントと英語の学びの相乗効果を図ってきた。成果は広く発信し、著書4点、査読論文 点(うち英語論文 点)海外学会発表 点、国際学術交流 件 などである。科学研究費としての本研究は集大成を行い、小中学校の多様な教科のコンテンツを活かした教科連携の具体的なカリキュラムマネジメントによる参加者の思考と認知の深化について発信ことができた。例えば、サイエンス分野ではその成果を物理学会で発表したり、体育分野では、運動能力と認知機能の研究から、仙台市の「プロ球団コラボ動画」としてエクササイズ推進に貢献している。今後は、①その成果を自治体の研修や、NPO等での研修システムの構築、教員養成大学での教科連携取り組みに取り入れていく。②コロナ禍後の将来を見据えて英語及び日本語での研究成果発信を行い、海外教育機関とのさらなる学術連携を行う。令和4年に向けては、現在、スェーデンのダーラナ大学との和文化CLIL、オーストラリアでの日本語CLIL教育とオンラインで結び、日本の教育の強みをCLIL発想で生かしている。③英語教育の枠組みだけでなく、英語を外国語として学ぶ国々と共同できるコンテントベースのCOIL型教育として発展させ、グローバル社会の諸問題を協働的に解決する21世紀型スキルを備えた教員の育成に役立てていく。その際に、本研究で開発した「教員の21世紀型スキル(Edu21st)」を媒介として、科学的知見とエビデンスに基づく英語教育と異分野連携の可能性を拡げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で、海外共同研究や国内対面研究会にかかる費用を支出する計画が実行できていないため。次年度も引き続き、海外共同研究はオンラインで行うが、国内対面研究会開催、講師招聘、分析ソフトなどの購入を計画している。
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備考 |
発表者 Josephine Moate, Tea Kangasvieri "Student Agency within Finnish CLIL: Teachers as innovators before and during COVID-19" , Japan CLIL Pedagogy Association, 2021
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