本研究は留学が与える影響に関する質的調査の一端として、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランドの5か国にある大学付属の研修機関で語学プログラム(英語)を受講した都内私立大学の学生18名を対象に要素の抽出と学びの構造を把握することを試みた。本研究では留学直後に出現した影響を「短期的影響」、また帰国後1年経過してから出現した影響を「長期的影響」と定義し、主観的な測定がデータとして客観的に扱われることを通じて異文化理解教育にとって大きな意義を持つことが示唆された。 そして今年度は最終年度ということで、国際学会(Comparative and International Education Society)にプロポーザルを提出し、2月にアメリカのワシントンDCで口頭発表を行った。タイトルは”A Study on Short- and Long-term Impacts of Studying Abroad: The Educational Value of Study Abroad Through Personal Attitude Construct Analysis”で、学会ではパネルディスカッションのChair(議長)も行った。質問紙調査による量的な調査報告や帰国直後の留学の教育的効果について言及した研究は数多くあるが、留学が学習者個人の意識に与える影響に着目した調査や学習者を留学前から数年にわたり追跡した縦断調査のようなものはほとんど存在しない。そのため本発表では特に個人別態度構造分析を使用した3年間の縦断調査の中でも留学による短期的影響と長期的影響の分析結果と考察を発表した。
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