本年度の研究の目的は、1) 英語教職課程の学生の英語音声習得の現状を定量的に分析する、2)発音訓練の効果を測定する、3) 音声生成パターンの習得到達度と聴解力・読解力、読解速度、語彙数による英語習熟度との関係を分析することの3つであった。具体的には、教職課程学生の生成パターンの到達度を母音のcompensatory shortening (母音短縮率)、ISI持続時間制御、弱母音生成の観点から分析した。生成パターンの習得到達度と、英語標準テスト(TOEFL ITP/ TOEIC Speaking Test) による聴解力・読解力とスピーキング力、そして読解速度・語彙数の標準テストにより測定される英語力との関係も分析した。 現状分析後、発音訓練を3か月間実施した。発音訓練は、6回の講習とグループ訓練・個人訓練であった。日本語と英語の音声の相違点を学習し、英語音声の生成方法を学習した。訓練後、効果測定を実施した。今回の研究では、特に弱母音の生成に関する訓練効果を検討した。 現状分析結果は、すべての指標間に相関性が示された。特に読解速度と語彙力、読解速度とTOEFL ITP、TOEFL ITPとTOEIC Speakingの相関は強いことが示された。ISI内のストレスを担う母音に対する母音持続時間の短縮率は、ISI内の音節数に関わらず、教職課程学生と米国人話者間には有意差は観測されなかった。母音短縮率 (1 音節から2音節への短縮率)は、他の4指標と正の相関の傾向を示し、特に読解速度と語彙力に強い相関を示した。 本年度の研究では、弱母音の音質に関する効果測定結果を検討した。発音訓練後には開口度が狭くなっており、英語母語話者に近い発音になっていることが示唆された。英語習熟度が高い話者は、F1値の上達が高い傾向が観察された。ただし、F2値に関しては、明確な傾向が見られなかった。
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