研究課題/領域番号 |
17K03025
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
川嶋 正士 日本大学, 工学部, 教授 (50248720)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 5文型 / 統語分析 / 英語教育史 / 規範文法 / 英文法史 |
研究実績の概要 |
今年度は、科研費の援助を受けた資料調査のおかげで予定以上の成果を上げることが出来た。 研究実施計画に従い報告する。 (a) 資料調査・情報収集については、少し研究計画の変更があったが順調であった。夏季休暇中にハンガリー・ブダペストとスイス・ジュネーブを訪れた。ブダペストではMarcel den Diccken氏と19世紀規範文法の統語理論に関して意見・情報交換を行った。同氏の勧めによりジュネーブ在住のJi Shim Young 氏を訪れ、統語的問題について研究を深めることが出来た。10月には英国・ロンドン/バーミンガムとドイツ/ビーレフェルドへ出張した。英国では、バーミンガム大学において同大学院在学中の元教え子である伊藤あずさ氏の協力を得て効率的な調査ができたうえに、帰国後の研究協力体制も確立できた。こちらは、彼女の好意によるところが多く、出張の回数を削減するなど、科研費の支出を抑えることができ、研究費の有効活用にも役立っている。ビーレフェルドにおいてはJohn Walmsley氏と会談でき、有意義な情報交換を行った。予算の関係で、科研費による海外出張はこの2回のみにとどまったが、成果は大きなものであった (b)データ分析は当時の東京大学大学院生(現在筑波大学助教)の青田庄真氏と連携を図り、進めている。こちらも、氏の厚意により高額な質的データ分析ソフトを購入することなく研究が進んでいる。データの分析と解釈には相当の時間がかかると見込まれるので、3年目をめどに研究成果を公表・論文化できるよう準備を進めている。 (c) 口頭発表は研究実施計画通りの学会で3本行った。29年度に収集した資料などに基づく論文を平成30年度に発表する予定であったが、資料収集の成果が予想以上に上がったので29年度中に3本の論文を日本学術会議協力研究団体の査読論文として投稿し、すべて採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究が順調に進んだことは、2つの理由による。 1つは、海外における大規模な資料調査・情報収集が可能になったことである。これまで資金的な理由で実行できなかったヨーロッパでの文献調査が可能になったことで今まで判明しない多くの事実が明らかになった。科研費による米国における研究までは行えなかったが、29年度に収集した資料とデータのみで、今後研究が飛躍的に進むことを確信した。 2つ目は、海外の世界的権威である研究者と意見交換を行った中で、多くの情報を得られたのと同時に、報告者が研究している内容や資料が、彼らのレベルと遜色ないものであったり、時には凌駕していたりすることが互いにわかり、今後の研究に対して敬意を以って協力してもらえる見通しができたことである。すでにバーミンガム大学、ビーレフェルド大学では無償の資料調査協力体制が得られた。ブダペスト在住の den Dikken氏とジュネーブからUAEに移籍したYoung氏とも、定期的に情報交換を行っている。 これらの情報と支援体制が大きな励みとなったことはたしかである。海外出張中は論文の執筆などは困難であるため、初年度は調査に専念するつもりであったが、帰国と時期調査の間に論文化に集中し、当初の予定を上回る3本の論文を上梓することができた。なお、研究の成果や学会発表の予定などは、機会が生じるたびにFacebookを通じて国民に発信することを心掛けた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は Parallel Grammar Series における「5文型の祖型」の誕生前夜の詳細な経緯を英米両面から究明する予定であったが、この点に関しては推進方策が変更される予定である。 研究上のパートナーであるJohn Walmsley氏が「5文型の祖型」の発案者であるEdward Adolf Sonnenscheinが提唱したとされる 'pure grammar' についての研究を進めているので、この方向性を見極めたうえで同研究を深化させる方が大きな成果が得られると考えた結果である。 氏と協議しているうちに補完的な研究として日本における「5文型の祖型」の誕生前夜の詳細な経緯を調べることが重要であるという認識が生れた。この目的のために、国会図書館などが所蔵している雑誌や文法書の調査を行う。昨年度より継続しているデータ分析の手法を用い、文部科学省内の国立教育政策研究所教育図書館所蔵の教科書データを調査し、文法用語や統語分析がどのように変容を遂げたかを研究する。 更にに5月の連休には和歌山大学の江利川春雄教授所蔵の資料を調査することが決定している。また、昨年末より調査した内容を6月に国際会議で発表し、世界の研究者と情報を交換する。 この後7月に日本英語教育史学会研究例会において日本において5文型を初めて本格的に紹介したとされる細江逸記に関する資料的研究発表を行うことも内定している。日本における英語研究の専門雑誌である『英語青年』を創刊時より1954年の第100巻まで調査し、その中で、細江が英語学会においてどのように受け止められていたか実証的に研究する。さらには8月末に日本情報ディレクトリ学会全国大会において細江逸記のロンドン滞在時代の資料研究に関して発表する予定である。これらに基づき、年度末までに数本の論文を執筆することにより、申請時の計画を上回る研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を3回予定していたが、予算の関係で2回にとどめた事による。次年度使用額は文部科学省内国立教育政策研究所教育図書館や国立国会図書館などにおける資料収集に費やす。
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