令和元年度は、本研究の最終年度に当たる。10月に発生した台風19号による水害で、勤務先の日本大学キャンパスが水没し、図書館所蔵の貴重な定期刊行物がほとんど廃棄されるという被害にあったが、この1年も有意義な研究成果をあげることができた。文字化された成果は有審査論文3本であった。口頭発表は、国内2回(ともに招待発表)であった。以下、概要を報告する。 3本の論文はすべて日本学術会議協力研究団体に有審査論文として採用されたものである。これらは、海外で調査・研究した資料に基づく。 特に最初に発表された論文で「5文型の祖型」が提唱されたParallel Grammar Series を研究する一環として、Complement という用語が用いられた起源をこれまでの定説より10年さかのぼる文献を紹介し、その統語理論の全容を明らかにしたことこれに直接的影響を与えた Carl Ferdinand Becker の文法体系について紹介できたことにより、本研究の目的を達成したといえる。 また、2本目の論文では、Charles Parker Mason の1858年の英文法書において Complement と Indirect Object という文法用語が、現在の学習文法に見られる形で定型化される過程を明らかにしたことは、これまでの英文法史研究に新しい知見を加えた意義深いものである。さらに、日本で「5文型」を最初に提唱したとされる細江逸記に見られる保守的文法観について、3本目の論文でこれまで論じられなかった視点より新しい知見を示すことができた。 口頭発表に関しては、3本目の論文につながる、日本における「5文型」提唱の期限に関する研究と、今後の研究につながる、英文法史における科学性と規範性に関する有意義な研究成果を発表できた。
|