本研究は、当初は、自己調整学習が困難な学習者を特性別に類型化し、学習者の自らの学びを振り返る学習記録を継続的に課し、その記述を精緻化する教育的介入を行うことで、学習者特性に応じた支援方法を提案することを目的としていた。19年度までの研究では、学習者のパーソナリティ特性のひとつである、Conscientiousness と自己調整学習を推進する要素のひとつである、自己の自己調整度合いについて適切な情報を受け取れるかどうか、の2点に正の相関関係があることが示唆された。20-21年度では新型コロナ肺炎流行ため研究のほとんどを中断せざるを得なかった。そこで22年度は、コロナ禍でも継続可能な研究テーマを中心に置くこととした。具体的には、自己調整学習力の各要素と学習の達成度との関連の解明を目指し、未だ明らかになっていない、学習の達成度と自己調整学習力の関係について示唆を得ることを目的とした。 まず自己調整学習スキルを構成する要素を先行研究の分類に従って7つのサブカテゴリーとし、自己調整学習の段階を測るアンケートにて調査した。研究者が所属する各大学において、研究倫理要綱にもとづき任意にて協力を依頼した。その結果、三大学の256名から回答を得ることができた。続いて調査協力者の英語習熟度を英語資格試験またはそれに該当する試験の結果から初級、中級、上級の三段階に分類し、自己調整学習力のサブカテゴリーと英語力の相関を統計ソフト(Statworks5)を用いて分析した。その結果、英語習熟度によって自己調整学習度合に有意な差があること、初級者、中級者では各要素間での相関は見られなかったが、上級者では7つの要素のうち6つまでに中程度に相関があることが示唆された。この結果に基づき上級者の中から3名に協力を依頼して聞き取り調査を行い、各要素の相関が実際の学習行動にどのように表れているのかを観察した。
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