研究課題/領域番号 |
17K03032
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
齊藤 公輔 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (90532648)
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研究分担者 |
田原 憲和 立命館大学, 法学部, 准教授 (80464593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポートフォリオ / マインドマップ |
研究実績の概要 |
気づきを促す仕組みづくりについて、学習過程および学習後に、学習者が何をどのように振り返るのかを可視化する方策を検討した。仮に同じ授業を受講しても、そこから何を得る(得た)のか、何を学習する(した)のかは、学習者によって異なるはずである。この仮説のもと、受講内容が同一でありながら、学習成果・学習内容・気づきが異なる場合の学習記録のあり方を考察した。その際、学習者間の比較が容易となるような学習記録となるよう心がけた。 eポートフォリオ導入が進められている中、本研究でもブラウザやアプリを利用した学習記録を模索した。その中でwebブラウザおよびアプリケーションソフトウェアで編集可能なマインドマップを学習記録に用いることを試みた結果、一部で上記の目的を達成することができた。特に、マインドマップの高い自由度を活かして、学習者は自ら学び取ったことや感じ取ったことをそのまま記録することが可能であったと同時に、マインドマップの高い図解化力によって容易に全体像を把握することができ、これによって学習者間での比較検討が容易であった。 課題は、ドイツ語初級クラスでは学習の記録を全てドイツ語で記録することが難しく、結果的に母語で記録することになったことである。単語や各種表現を記録することは可能であったが、学習者の感想や疑問点、課外活動などを目標言語で記述することは叶わなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学習者の気づきを可視化し、自身や他者もその内容を把握しやすい学習記録の方策としてマインドマップを利用することに高い意義を見出すことができた。これは当初の予定通りに進められており、今後は記録の取り方によって学習者の学習への態度や学習成果にどのような影響があるのかを分析していくことになる。 一方、目標言語で「気づく」ための方策を完全に提案するに至っていない。中級ドイツ語学習者以上であれば、自身の気づきを目標言語で記録することが十分可能であることは推測できるが、ドイツ語初学者は利用可能なドイツ語語彙数が非常に限定されていることもあり、自身の気づきを十分に記録できない。学習者の「内側」で起こる「気づき」を他者が観察・分析するにはそれのメディア化が不可欠である以上、言語化(ドイツ語)以外の方策も検討する必要が出てきた。 加えて、学習の記録と併せて、授業の記録のあり方についても検討する必要がある。学習者からヒアリングを行う際、すでに受講した授業や、研究者が立ち会っていない授業がヒアリングの対象となるが、すでに終了した授業がどのようなものであるのかを整理して記録するフォーマットがないことに気が付いたからである。これの開発も急務であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
目標言語(ドイツ語)で気づくことは可能であり、その記録方法もマインドマップを利用することで十分目的を達成できることが明らかになってきたが、それにはすでに必要十分なドイツ語力が備わっている必要がある。したがってドイツ語初学者が目標言語で気づくことは、限られた語彙数の中でのみ可能であると言える。 今後は、以上の成果を論文にまとめると同時に、学習者からのヒアリングを進め、マインドマップを利用した学習記録が学習にどのような影響を与えているのかを分析する。また、学習の記録と併せて、授業の記録のあり方も検討・開発していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見込んでいた学習者数よりも数が少なく、それゆえ購入した機器の数が少なかった。また予定していた海外への出張が事情により延期されたため、旅費が余ることになった。今年度は国内調査の増加が見込まれており、その旅費として前年度余剰分を計上する。また、他の科研代表者と共同で研修会等を予定しており、その実施にかかる費用を計上する。物品に関して、授業中学習者に貸与するタブレット端末の予備を購入する。BYODが実施され基本的に学習者持参の端末を利用しているが、OSによってはアプリケーションが供給されていないことを受けての措置である。
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