研究課題/領域番号 |
17K03044
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
吉村 貴之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40401434)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルメニア / 旧ソ連 / 中東 / ナショナリズム / 共産主義 / ディアスポラ / 地域紛争 |
研究実績の概要 |
これまでの研究では、政治文書の史料公開が進んでいなかったため、ナゴルノ・カラバフ自治州をソヴィエト・アルメニアに移管する要求がいつ頃アルメニア人社会から提出されたのかについては、関係者からの聞き取りや、ナゴルノ・カラバフの先住者をめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの歴史家論争などを通して、間接的に示されてきた。 1990年代末に公開された1960年代後半のアルメニア共産党の文書からは、当時のソヴィエト・アルメニア政府が、ナゴルノ・カラバフ自治州をソヴィエト・アルメニアに移管すべきとの要求がアルメニア人の知識人から上がっている事態を掴んでいたことが史料的にも確認できたが、これに積極的に呼応して、ソ連邦政府に自治州の移管を請願するといった特段の働きかけは見られなかった。むしろ、1970年代の半ばに、ナゴルノ・カラバフ自治州のアルメニア人共産党第一書記が、ナゴルノ・カラバフ自治州はソヴィエト・アルメニアに所属するのが自然であると共産党地方委員会組織委員会で演説したことがソ連邦政府に問題視され、ソヴィエト・アルメニア政府が釈明に追われる事件まで発生した。この自治州の所属問題は、ソヴィエト・アルメニアの知識人の間だけでなく、ナゴルノ・カラバフ自治州の共産党員の間にも、遅くとも1970年代にはソヴィエト・アルメニアへの移管を求める考えが浸透していることが伺えると同時に、ソヴィエト・アルメニア政府の置かれた微妙な立場が浮き彫りになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史料収集の面で、若干の遅れが出ている。現地国立図書館の定期刊行物の保存状態に難があり、欠号や汚損などで必要な記事が全ては読めず、他の図書館に保管されていないか確認するのに手間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、さらに政治文書を精読することで、ナゴルノ・カラバフ自治州をソヴィエト・アゼルバイジャンからソヴィエト・アルメニアに移管する請願が、いつ、どの社会層から上がってきたかを検討すると同時に、その背景にある反テュルク(トルコ系民族)・ナショナリズムを、諸民族の平等を唱える共産主義の中で、どのようにソヴィエト・アルメニア政府が制御しようとしていたかについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究書の購入を計画していたが、航空券の価格変動で出張旅費が若干増大したため、図書の購入金額が当該年度の予算で賄われなくなったため。次年度に改めて発注する。
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