本研究は、民間所在資料や地方公共団体における公文書の保護において転機となった第二次世界大戦前後のイタリアやバチカンでのアーカイブズ管理の施策・実状を明らかにし、戦前、同種のアーカイブズ保護の施策が進展しなかった日本の事情を踏まえ、検討・考察を行うものである。 新型コロナウィルス感染症の拡大により研究期間を延長した令和4年度は、感染症の世界的な情勢に改善が見られため、補完的な調査を目的とした海外渡航を実施した。これまでの調査において、イタリア各地の文書・図書保護局が収蔵する資料の内、本研究の対象となる資料をデジタルカメラによる撮影を通じて画像データを収集し、内容の分析を進めてきた。また、バチカン図書館やサレジオ大学に収蔵され、調査の対象とする資料に関しても、バチカン図書館分は国文学研究資料館で公開されているデータベースを、サレジオ大学分もこれまでの調査の過程でデジタル画像データを直接収集し、内容の分析を進めてきた。 事業期間の最終年度を迎えて、これまでの成果を最終報告書として集約するにあたり、これらのデジタル画像データを用いて解読や収集したデータにおいて不足している、または新たに補完すべき情報に関して、イタリアやバチカンのアーカイブズ機関やアーキビストの協力を得ながら、情報収集を行った。 また、日本全国の公文書館やアーキビストを主たる読者とする学会誌上で国際的なアーカイブズに関する近年の研究動向についても執筆を行った。さらに、サレジオ大学に所蔵されているマリオ・マレガ資料の分析結果と今後の展望について研究発表を行いながら、事業期間全体に関する成果報告書を作成し、集約した。
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