本研究の目的は、東アジア(日本・中国・韓国・ベトナム・琉球)の宮廷工芸(宮殿・調度・服飾)を対象とし、東アジアの実情に即した物質文化研究を構築することにある。本研究は、東アジア宮廷の普遍規範である礼制と宮廷工芸の様式との関係性に着目し、各宮廷工芸の共通規格と相異特色を相対的に検証するものである。その研究方法は、東アジア宮廷工芸について文献史料・実物資料・実際用途の観点から調査し、諸調査の総合に基づく検証を行なう。 平成29年度は、日本・韓国・琉球の宮廷工芸を対象として、宮廷関係の史跡・資料・行事・に関する調査を行なった。日本では難波宮跡、大津宮跡、長岡宮跡、平安神宮、住吉大社、大阪歴史博物館など、韓国では景福宮、昌徳宮、慶熙宮、昌慶宮、宗廟、社稷壇、国立中央博物館、国立古宮博物館、ソウル歴史博物館、北村韓屋マウルなど、琉球(沖縄)では首里城、沖縄県立博物館美術館などにおいて、宮廷関係の史跡・資料・行事を対象とし、形式・技法・意匠などの造形様式、規定・習俗・用例などの生活様式に関する調査を行った。また日本の文献として『旧儀式図画帖』など、中国の文献として『皇朝礼器図式』など、韓国の文献として『華城城役儀軌』など、ベトナムの文献として『大南一統志』など、琉球の文献として『球陽』などの解読を行なった。 以上の調査を通じて、東アジアの宮廷工芸について時代・地域・民族などの特質を検証することに努めた。
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