本研究の目的は、東アジア(日本・中国・韓国・ベトナム・琉球)の宮廷工芸(宮殿・調度・服飾)を対象とし、東アジアの実情に即した物質文化研究を構築することにある。本研究は、東アジア宮廷の普遍規範である礼制と宮廷工芸の様式との関係性に着目し、各宮廷工芸の共通規格と相異特色を相対的に検証するものである。その研究方法は、東アジア宮廷工芸について文献史料・実物資料・実際用途の観点から調査し、諸調査の総合に基づく検証を行なうものである。 2019年度は、日本では京都(京都御所・下鴨神社・上賀茂神社など)、ベトナムではフエ(皇城・宮廷博物館・皇陵など)・ホイアン(来遠橋・馮興家・陳祠堂・福建会館・関公廟・海南会館・潮州会館・ホイアン博物館など)・ニンビン(ホアルー遺跡など)・タインホア(胡朝城塞遺跡など)・プールオン村・プールオン自然保護区などにおいて、宮廷関係の史跡・資料・行事を対象とし、形式・技法・意匠などの造形様式、規定・習俗・用例などの生活様式に関する調査を行った。また日本の文献として『旧儀式図画帖』など、中国の文献として『隋書』など、韓国の文献として『大典会通』など、ベトナムの文献として『大南会典事例』など、琉球の文献として『球陽』などの解読を行なった。以上の調査を通じて、東アジアの宮廷工芸について時代・地域・民族などの特質を検証することに努めた。 また、これまでの調査に基づき、東京国立博物館において特集陳列「朝鮮王朝の宮廷文化」(2020年2月4日~2020年2月26日。※2020年3月15日までの予定であったが、新型コロナウイルスの感染予防に伴う博物館の休館によって中断)を行い、同陳列にかかる図録を刊行して研究成果の公開と普及に努めた。
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