本研究では、東アジア文化圏について、礼制という秩序理念に基づく宮廷が運営された歴史的事実を根拠とし、中国大陸・日本列島・朝鮮半島・越南地域・琉球諸島によって設定した。礼制は身分に応じた建築・器物・衣服などの形式や意匠の規格に言及するため、物質文化と密接な関係をもつ。さらに礼制は社会規範でありながら、社会的実情に応じた適用を前提としていたため、東アジア地域に広がり時空を超えた普遍規範となった。すなわち東アジア宮廷工芸には、礼制に基づく共通規格とともに、各宮廷の背景にある国家・地域・民族・時代などを反映した相異特色も現出するので、東アジア文化を相対的に検証するうえで好資料となることを確認した。
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