本年度は最終年度であることから、研究全般の推進と総括に注力し、最終的に令和2年3月28日に総括の研究会を行い、成果の総括と今後の展望を整理した。本年度における成果は以下の通りである。 近世に関しては、仙台藩の行政機構における意思形成について継続的に分析を進めた。なかでも天明飢饉かにおける藩の対応に関する新出史料を発見し、従来の見解とは異なる状況を確認できたことは成果として極めて大きい。さらに、藩の意思形成が藩政上部のみならず地域社会レベルまで延伸する可能性を模索し、その具体例を水戸藩の政策が与える影響の諸相を地域社会において検討し、成果を論文として公表した。 近世・近代移行期に関しては、前年度に引き続き、明治初年の中央・地方行政官庁の文書の網羅的収集とその分析、ならびに明治初年に長らく太政官政府の参議と大蔵省の卿(長官)をつとめた大隈重信についての分析を行った。前者については、原議の内容を吟味せずに惰性で押印する「盲印」や、原議には押印するが本音は反対であることを示す「逆印」など、現代日本の稟議制において行われている押印慣行が明治初年に現れていることを解明し、分析結果は東北史学会大会にて報告を行った。後者については、前年度の分析結果に基づいた論文の公表が決定している。 近代に関しては、前年度に引き続き、旧帝国大学下の学内外意思決定過程に関わる簿冊について、大学アーカイブズにおける所蔵状況について調査した。その結果から、戦前期において旧帝国大学の総合大学への拡充と、教授会、学部長会議、評議会の成立過程との相関関係があきらかになるとともに、大学自治と意思決定過程と様相が判明した。これらの成果の一端は、East Asian Consortium of Japanese Studies等で報告をおこない、大学アーカイブズの資料蓄積の歴史的経緯については論文、著作等で公表をおこなった。
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