研究課題/領域番号 |
17K03058
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須田 牧子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (60431798)
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研究分担者 |
岡本 真 東京大学, 史料編纂所, 助教 (50634036)
山崎 岳 奈良大学, 文学部, 准教授 (60378883)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日明関係史 / 入明記 / 策彦周良 / 再渡集 / 初渡集 / 遣明船 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に16世紀の遣明船の副使・正使を務めた禅僧・策彦周良の旅日記「初渡集」「再渡集」を精読し、そこに登場する約400人の人物像を検討し、中世社会のなかでどのような立場にある人間がいかなる形で遣明船派遣事業に関与していたかを解明すること、第二に日記の筆者である策彦の履歴、特に帰国後の事績を復元し、彼が海外経験をいかに自らの価値としていたのかを追究することにある。そのための具体的な研究活動は下記の三つの柱で構成される。①「再渡集」の精読:策彦周良が正使を務めた時の日記である「再渡集」の講読会を行って精読し、翻刻と訳注を作成する。②「初渡集」「再渡集」の登場人物の研究:上記「再渡集」と、策彦周良が副使を務めた時の日記である「初渡集」の登場人物リストを作成し、彼らに関わる日本側史料を探索し、人物像とその国内社会における地位を明らかにすることを通じ、遣明船経営を支えた人的基盤の分析を行う。③策彦周良関係史料の収集:策彦周良自身の履歴の復元をめざし、史料を収集する。①については、5回の講読会を通じ、「再渡集」全体の4分の1程度の講読を終え、翻刻・読み下しと注釈・現代語訳を蓄積し、人名の比定についても、特に中国人名について多くの成果があった。また②③については予備調査を漸次進めているところである。 なお本研究は基礎的なデータの集積と整備に重点を置いており、主たる研究成果は期間終了時に報告書の形でまとめ、公開することを予定している。そのため公開・公刊された今年度の成果物は、途中経過報告的なもの、あるいは副次的なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核をなす柱①「再渡集」の精読については、6・9・11・1・2月と予定通り5回の講読会を催し、翻刻・読み下しと注釈・現代語訳を蓄積した。概ね予定通り全体の4分の1強を終了したことになる。特筆すべきは中国側史料を並行して読み進めることにより、遣明使節たちが交渉を持った、寧波・舟山の軍事・民事担当者の名前が判明し、その地位・立場が相当に明らかになってきていることで、16世紀半ばという、中国沿海部における騒擾状況が激しさを増してくる時期の、当該地域社会の中間層の動向の一端がみえてくるという思わぬ収穫が得られつつある。柱②については、以前、本研究の代表者・分担者らが関わった科研で精読した「初渡集・下」の講読成果の整理をODを雇用して行ない、人名索引を作成した。また遣明船関連史料を多く含むいくつかの文書群について、史料群そのものの整理・検討を行ないつつ、必要なものについては原本調査準備をおこなった。来年度以降実施予定である。柱③については各種目録の検討作業を進めた。以上は予定通りの成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にあっては、柱①の講読作業を進めるのが最優先であり、今年度も既に4月に講読会を行ない、成果を蓄積している。このまま粛々と読解を進めていくこととする。関連して、本読解作業において、重要な位置を占めることが判明した中国側史料についての史料的検討を進め、「再渡集」の講読成果とともに公刊できるよう整えていくことを新たな課題として付け加える。柱②③に関しては、2017年度の成果を踏まえ新たな予備調査を進めつつ、順次史料調査を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸機関との諸調整の結果、いくつかの出張が新年度にずれ込んだため。 6、7月に予定している出張旅費として使用する予定である。
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